2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧
岡村俊明「中野好夫論」(法政大学出版局)を途中まで読んでやめた。著者は1938年生まれの英文学者で、鳥取大学名誉教授である。 「伝」ではないのかと思ったら、実際「伝」も少しはあるものの、中野の著書や翻訳の解題みたいなものが続くのでやめた。 中野…
2000年ころだったか、私は武蔵野女子大学(現武蔵野大学)の日本文学の専任の公募に出して面接に行ったら、普通そういうことはしてはいけないのに面接に来た人をみな同じ部屋に入れていた。私は隅のテーブルで喫煙していたら、向かいで喫煙していたのが文藝…
高田康成は東大駒場の英語の先生で、専門はチョーサーなのだが、シェイクスピアにも通暁しており、ラテン文学を中心とする碩学で、私が行く前に阪大の言語文化部におられた。航空学校からICUをへて東大大学院へ来た変わり種だが、今では学士院会員である。 …
角川春樹の姉の辺見じゅんのノンフィクション「収容所から届いた遺書」を原作として瀬々敬久が監督したもの。ラーゲリでの11年の抑留の間人々を文芸活動などで励まし続けたインテリ山本幡夫が、ガンのため異国で死んでしまい、家族に宛てて遺書を書くが、ソ…
かつて私の本の刊行を卑劣なやり方で妨害し、裁判においてもその理由を遂に明らかにしなかったのが、集英社インターナショナルの佐藤眞である。1960年福岡県生まれ、東大文学部国語学科卒、祥伝社、クレスト社をへて集英社インターナショナル、2020年に定年…
2018年の日本映画「検察側の罪人」は、雫井脩介原作、原田眞人監督、木村拓哉・二宮和也・吉高由里子主演だが、アマゾンプライムで三点以下と評価が低いから、どうかなと思って観てみたら、検察の裏面を描いた秀作だった。勧善懲悪ではないし、スカっともし…
1988年に岩波新書の新赤版が発足した時、その第一冊として出されたのが大江健三郎の『新しい文学のために』であった。第一冊といっても一度に数冊出るわけで、付せられた番号が一番ということである。1978年の「岩波現代選書」創刊でも、第一は大江の「小説…
岩波文庫の赤帯に、フランコ・サケッティ「ルネッサンス巷談集」というのが入っている。14世紀イタリア小咄集で、「三百小咄集」というのが原題だが、300全部は残っていないらしく、うち75編を杉浦明平が訳している。読み始めてすぐ、「ああこれはつまらない…
1954年に実際に起こった二人の少女による片方の少女の母親殺害事件をもとにした、ケイト・ウィンスレットのデビュー作映画で、監督は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン。舞台はニュージーランドで、ややヘンテコで不穏な雰囲気だが、次第…
岡倉登志(たかし、1945年11月21日ー )は、岡倉天心の曽孫だというが、天心の子孫は多いので、父親が誰かはまだ分からない。ボーア戦争についてまとまった本を読んだことがなかったので読んでみた。岡倉はこれより前に同題のやや薄い本を教育社新書で出して…
1999年ころのことだが、哲学者の中島義道は、日本における公共放送を騒音だとして弾劾することで知られていた。当時中島は、こんなにうるさいのは日本だけだと言っており、他の日本人はそれが気にならないらしいから、自分はあたかも日本に滞在している外国…
1975年3月といえば、私は小学校を卒業して中学に入る直前だったが、調べるとその頃の夜8時から、「落下傘の青春」という単発ドラマがNHKで放送されていた(矢代静一脚本、財津一郎、山本學、仁科明子主演)。両親が観ていたのを、私は居間で雑誌でも読みなが…
平岩弓枝が死去したので、吉川英治文学賞受賞のこれを読んでみた。この賞は、大衆文学系の重鎮が与えられる賞で、必ずしも作品の質を保証しないが、これは予想を裏切っていい小説だった。話は大石内蔵助らが切腹したあとの妻石束りくと不肖の息子・大三郎を…
以前、岩波文庫の翻訳者を調べていた時、マルモンテル『インカ帝国の滅亡』の訳者・ 湟野(ほりの)ゆり子の経歴がまったくわからなかった。ところが中川久定『甦るルソー』を読んでいたら、あとがきの協力者に、湟野正満・ゆり子夫妻とあったので、調べたと…