三島由紀夫が続きますが別に好きなわけではなく、嫌いです。
佐伯彰一先生の『回想(メモワール)』に、三島と親しかった円地文子が、三島が死んだあと、三島が生きて牢獄に入っている小説を書いたとあったので、『円地文子辞典』の三島の項を見たら書いてなかった。
昨日ある人に教えられて、それが「冬の旅 死者との対話」という、『新潮』1971年11月号に載った短編で、『花喰い姥』に収められ、『円地文子全集 第五巻』に入っているものであることが分かった。
牢獄というのは佐伯先生の勘違いで、円地らしき老女作家が自宅書庫にいると三島の幽霊に話しかけられて、そのあと新幹線で京都へ行く途中も三島の幽霊が出るという筋で、三島の名は出てこないが「M氏」とあり、自衛隊へ乱入して切腹し、生首が週刊誌に載っていたとあるから間違いあるまい。「聖セバスチャン」の話や歌舞伎の残酷趣味の話をしていた。もっとも、三島の亡霊に怯えていた川端康成はこの短編を読んでさぞ怖かっただろう。
(小谷野敦)
