2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

何年あればいいんですか?

私が若いころの新聞記事で、記者が書いた短いものだが、さる東大教授(匿名)が、大学内部の腐敗を嘆いているという、まあよくある記事であった。ところがその最後に、「しかしこの教授も、あと二年で定年を迎えるという」とあり、だから改革はできないとい…

五木寛之の謎

佐藤浩市が主演した「青春の門」(1981)を観ていなかったので観てみたが、想像を絶するつまらなさだった。話はあらかた知っているし、古風なマッチョ趣味の映画で気色悪いことこの上ない。映画化が「自立篇」で止まってしまうというのも当然である。シリー…

複雑な事情

小学校教育に関する書籍をアマゾンで見たらこんな「正誤表」がついていた。複雑な事情を感じさせる。 [正誤表]2020/07/08本書においては、以下に不適切な個所がございました。お詫びして訂正いたします。「おわりに」において、「『仕掛け学』という言葉の使…

長堂英吉「黄色軍艦」を読む

続けて長堂英吉「黄色軍艦」を読む。1998年『新潮』に一挙掲載された250枚くらいの中編か。平野啓一郎の「日蝕」と同じ年だから編集長は前田速夫だろう。 明治20年代の沖縄が舞台。明治の琉球処分で、独立して薩摩と清国に両属していた琉球は日本領になり、…

長堂英吉(ながどうえいきち)「ランタナの花の咲く頃に」感想

沖縄の作家・長堂英吉が2020年に87歳で死んでいたことに気づいたので、その出世作『ランタナの花の咲く頃に』(新潮社)を読んでみた。これは1990年の新潮新人賞受賞作で、当時長堂は58歳である。のち『黄色(ちいる)軍艦』で、66歳にして芸術選奨新人賞を…

鈴木貞美と大衆文学

前に触れた「石川淳の世界」は、シンポジウムをもとにしたものだが、最後のほうに鈴木貞美が出てきて、例によって、純文学と大衆文学などという区別は不要だと気炎を上げている。私はこの件で十年くらい前に鈴木と論争したことがあるのだが、鈴木はどうも石…

山田詠美の「選評」をめぐって

第169回芥川賞の選評を見ていて、山田詠美・選考委員の「選評」に、気になる一節を見つけた。「このところ何度となく、「芥川賞選考会は、他のジャンルから出て来た候補者には授賞しないと決めたようだ」という当て推量めいた文言を目にしたのだが…いいえ、…

「最後の文人石川淳の世界」(集英社新書)のざっとした感想

「最後の文人石川淳の世界」(集英社新書)を読んでいるが大概何を言っているか分からない。冒頭で田中優子が、戦後石川は、天皇制を廃して大統領制にする千載一遇のチャンスだったと言ったが今ではほとんどの人が考えないと言っているが田中は考えないのか…

音楽には物語がある(56)坂田晃一の音楽 「中央公論」8月号

春の芸術選奨で、朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のシナリオを書いた藤本有紀が文部科学大臣賞をとったので、観てみた。私も以前は「ひらり」とか「純と愛」とか「朝ドラ」を続けて観ることはあったのだが、今は毎日15分小刻みに観るのが面倒で…

吉村忠典(ただすけ)「古代ローマ帝国」(岩波新書)

高田康成が名著だと書いていたので、吉村忠典(横浜国立大名誉教授)の「古代ローマ帝国」を借りてきて読み始めたのだが、いきなり「帝国」といっても皇帝がいるとは限らないと書いて、アメリカやソ連を「帝国主義」と言うとか書いてあったのでちょっと頭を…

秋野暢子と「みなしごハッチ」

これはどこかに書いたような気がする。秋野暢子という女優がいる。90年代だったか2000年代だったか、なつかしのアニメを振り返るというテレビ番組を見ていたら、「みなしごハッチ」が出て来た。誰だか忘れたが秋野より若い女優が「ゆっけーゆけーハッチー」…

塩野七生「わが友マキアヴェッリ」を読んだ

ジョン・ポーコックの『マキャヴェリアン・モーメント』が難解で歯が立たなかったので代わりに、抽象的なことは苦手だという塩野七生の『わが友マキアヴェッリ』を読んだ。これは、本のどこを見ても書いてないのだが、『中央公論』に1985年1月から86年12月ま…