2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧
石原千秋が、「産経新聞」の文藝時評で、芥川賞選評の、最初に出た分の「自己批評の欠如」について、批判している。ありがたい。 「自己批評が欠落している」という評価は、小説の表現上の評価なのだろうか、それを書いた作家への評価なのだろうか。前者だと…
三島由紀夫の戯曲「喜びの琴」は、1963年に文学座の分裂を引き起こしたものとして知られるが、その戯曲そのものはあまり知られていないし、上演も、64年に浅利慶太演出で日生劇場で初演されたのちは再演されていないようだ。 これは『ちくま日本文学全集 三…
版元から送ってきてくれた『睦月影郎読本』に、別名ならやたかしの「ケンペーくん」が復活している。睦月氏は『もてない男』が出たころに便りをくれた人で、私はそのオナニー日記を天下の奇書として珍重している。 その「ケンペーくん」の最後の長めのものは…
こないだ新聞の私小説に関する記事で伊藤氏貴がコメントしていて、昔のように作家の動静が広く知られている時代ではないので私小説が昔のように盛んになることはないだろう、と言っていたが、それはちょっと違う。 確かに戦前は、読売新聞の「よみうり抄」な…
『週刊文春』の書評コラムの欄は今週は酒井順子なのだが、その半ばで、「私達日本人は、負けるということに鈍感になっているのではないだろうか」とあって、はあ? と思って、何か特殊な意味かと思って先を読むと、「…などを見ると、今なお勝ちたいという気…
http://www.himeco.jp/blog/2011/02/%E5%A4%AB%E5%A9%A6%E5%88%A5%E5%A7%93.html 野田聖子が、遂に「野田姓」での入籍をしたという。 ここで、それが「野田」という家名を残したいという家制度的な思惑に基づくことを明らかにしている。しかし前半は詭弁であ…
1995年6月27日の読売新聞で、面白い記事を見つけた。島田雅彦が、インタビュー形式で、文藝時評をするものだが、「今月からゲストに迎えた島田雅彦氏は、三浦(俊彦)氏のもくろみに理解を示しつつ、「私小説を極める方が、文学の復権には有効」とみる。」 …
藁人形に五寸釘打ちこみながら河野多恵子と、奥本大三郎を含めて鼎談をしていた車谷長吉だが、それは車谷の座談集『反時代的毒虫』(平凡社新書)に入っている。金銭が話題なのだが、そこで河野が谷崎について、「あの人は派手だったようだけれども、カード…
佐伯一麦の『芥川賞を取らなかった名作たち』で、島田雅彦の「優しいサヨクのための嬉遊曲」が取り上げられている。私は全然名作だと思わないのは当然ながら、佐伯がこれを、ロシア・フォルマリズムの方法で書かれていると書いているのが、何とも意味不明で…
『週刊文春』「家の履歴書」が西村賢太なので、賢太が家の履歴書? と思ったら実家だった。祖父の代からの運送業で父は二代目社長ということで、実は生家は裕福で、谷崎的に祖父没後父がダメだったの類かと思う。 『週刊新潮』の藤間紫の記事、「猿之助」の…
『顰蹙文学カフェ』を読んでいたら、山田詠美、高橋源一郎、古井由吉の鼎談で、なんで三島由紀夫は芥川賞をとってないんだろう、って話していて、芥川賞が復活した昭和24年には三島はもう新人じゃなかったからで、それで戦後派第一世代はとってないって、そ…
『みすず』の、2010年読書アンケートというのを図書館で覗いてきた。いやー、お仲間の本を挙げている人が多いのには、そのたびに「おっ、お仲間」と失笑である。人選も奇妙で、もはや一冊の単著を出して以来著書など出ていない李孝徳がいるのには微苦笑、未…
東大比較文学出身者の単著数をいうと、ダントツに多いのは四方田犬彦だが、それ以下多さ順に並べると、こうなる。★は物故者。(2024年更新版) 四方田犬彦 112 小谷野敦 93 村上陽一郎 46 ★亀井俊介 44 竹下節子 42 平川祐弘 40(著作集を除く) 三浦俊彦…
http://yondance.blog25.fc2.com/blog-entry-2377.html 実に明快な作品解説である。ただ、二人の登場人物は、池田大作と宮本輝ではなく、戸田城聖と池田大作であり、もう一人のビルを建てた人というのは牧口常三郎であろう。強姦事件については、御木徳一を…
芥川賞が発表された時の島田雅彦は、 http://www.nhk.or.jp/kabun-blog/100/70093.html (朝吹さんについての批判的な意見は) 私がしたのですが低いハードルを綺麗に飛ぶという見方ですね、そこで意見が分かれた。 と言っているのだが、選評では田中慎弥に…
この話は書いたことあったかなあ。何か書いてはいけないような気がしていたのだが、玄月と藤野千夜が芥川賞をとった時に私は朝日新聞の企画で新喜楽に行っていたのだが、その時は宮本輝が代表して記者会見に応じた。そこにいたのは主として新聞記者で、私は…
昨日の小説はそれほど出来がいいとは思っていない。結末について迷った挙句、もっと普通のものにして、パイプクラブに送ったら掲載を拒否された。その理由として「つまらない」というのはいいとして、「禁煙ファシズムと戦うのにごろつき国家である中露の勢…
桐野夏生の『ナニカアル』は林芙美子が書いた文章という設定だが、「介護」なんて言葉が出てくる。こんな言葉は1990年の介護保険法より前にはなかったものだ。(磯部成文 id:jun-jun1965小谷野先生、介護という言葉は介護用品メーカーフットマーク社の磯部社…
上野千鶴子が東大を退職するようだがこれは早期退職。東大は三年ごとに定年を一年ずつ延長するので、昨年は63歳定年だったが、今年は延長年に当たるので、早期退職以外の定年者はいない。こういう措置は若い学者の就職の機会を奪うことになるのだがなあ。 (…
大江健三郎は、少年時代、岩波文庫の中村為治訳『ハックルベリー・フィンの冒険』を愛読したというが、中村の生涯についてはここhttp://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/15677/2/jinbun0000202260.pdfに詳しい。一高で川端康成と同期だったと…
三田文学新人賞受賞作である岡本英敏(1967− )「モダニストの矜持‐勝本清一郎論」(『三田文学』2010年春)を読んでみたのだが、小林秀雄‐柄谷‐糸圭といった風に受け継がれたアクロバティックな文章が実にいかん。その上日本語に間違いもあって「藤村を私淑…
「大波小波」は書く人が変わったのかなあ。BBCの二重被爆の件で怒り狂って、大田洋子「屍の街」、原民喜「夏の花」、「峠三吉詩集」を英訳せよ、と息巻いているのだが、英訳は…。「夏の花」は英訳はある。あとだいたい「はだしのゲン」が英訳されている。…