2019-01-01から1年間の記事一覧

桂文楽絶句伝説

名人と言われた先代桂文楽が、落語の途中に人名を忘れて絶句し、「勉強し直して出直してまいります」と言って高座を降り、そのまま復帰せず死んでしまったことはよく知られている。ところがこの話に際して、「志ん生なら人の名前くらい忘れてもいい加減な名…

「源氏物語」のメッセージ

私は漫画版「風の谷のナウシカ」は単にしっちゃかめっちゃかになった失敗作だと思うが、まあ解読したい人はすればいい。本が売れるのはうらやましいが。 しかし、 dokushojin.com赤坂:例えば『源氏物語』に、隠されたメッセージを読み解こうなんてする人は…

江藤淳と「抜刀隊」

松浦寿輝の『明治の表象空間』に、江藤淳が『南洲残影』で、軍歌「抜刀隊」を、西郷軍側の歌だと勘違いしている、と書いている。しかしこれは事実ではない。単行本8p「警視庁抜刀隊に志願する者も出なかった」とあり、38pでは「薩軍は、兵卒にいたるまで…

志賀直哉と北條民雄

高山文彦の『火花ー北條民雄の生涯』には、こんなエピソードが書いてある。川端康成が、北條から送ってきた原稿を読んでいると、訪ねて来た志賀直哉が「それは何だい」と訊き、ハンセン病患者のものだと知ると震えあがって逃げて帰ったというのだ。 だが、こ…

新刊です

p33「父親は大蔵官僚」→農商務省官僚 p.3に『理想』岩波書店→理想社 ニコライではなくエドゥアルト・フォン・ハルトマン

古谷田奈月へ

https://dokushojin.com/article.html?i=5804&p=4 << 古谷田 そうなんです。生きていけないんです。今回、元号が変わるとなったときに感じたことですが、私の周囲に多くいるリベラルな人たちは基本的に天皇制に反対で、元号が変わるからなんなの、昭和だの平…

綿野恵太氏の本

綿野恵太氏とは、五月に天皇制をめぐってトークイベントをやったのだが、初の単著が出るということで、天皇制批判が書いてあると売れないよ、などと言っていたのが、蓋をあけてみたら売れているので少し驚きやや焦っている。 まあ在日朝鮮人問題とかヘイトス…

馬楽聞き書き

五代目蝶花楼馬楽の聞き書き『馬楽が生きる』(創樹社、1986)を読んでいる。ウィキペディアでは六代目となっている、五代目小さんの兄弟子である。 聞き手は「遠藤智子、加藤貴子」とあり、いずれも1958年生まれだから、26歳くらいの二人の女性が日曜日ごと…

馬づら娼婦

落語の中で、馬づらの娼婦の悪口を言うのがある。複数の廓噺に出てくるが、これが不思議である。「その女の顔の長えのなんのって。上のほう見て真中見て下のほう見てるうちに真中忘れちゃう」と言うのだが、それを言うなら「上のほう忘れちゃう」ではないの…

わざと?の「時そば」

久米宏がラジオをやっているのを知らなかった。早速配信を聴いてみたら、林家彦いちが、昔寄席の昼席のトリで志ん朝が「時そば」をやったが、二人目の男が「いま何時だい?」と訊いたところで「九つで」と言ってしまい、そのあと「十、十一、十二」と、二人…

妻の事故

(活字化のため削除)

ディケンズは困る

『デヴィッド・コパフィールド』をジョージ・キューカーが1935年に映画化した「孤児ダビド物語」を観た。この邦題もすごいが、まあつまらなかった。 ディケンズは『荒涼館』が傑作で、「クリスマス・キャロル」と『オリヴァー・トウィスト』が通俗的な意味で…

「利根大堰」の謎

子供のころ、一家四人で「大利根堰」というところへピクニックに行ったことがある。父のトランジスタラジオから左卜全の「老人と子供のポルカ」が流れていたのを覚えているから、1970年の4月ころだろう。私は小学校二年生で、弟は三歳になる前だった。私は父…

小谷野賞

本年度小谷野賞は、 高槻泰郎『大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済』 (講談社現代新書) 特別賞に、 青木正美 となりました。

『諸君!』と『新潮45』

『諸君!』最後の編集長だった人の本が草思社から送られてきた。『諸君!』は末期にはくだらないウヨ雑誌になっていたという坪内祐三の言を否定しているのだが、私も坪内に同意する。この編集長は禁煙ファシストらしく、私は割と不快な目に遭わされて、電話…

まいボコ

山下泰平『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本 』 というのが柏書房から送られてきた。パラパラっと見たところ、日本近代文学史の盲点を突く著作だと思ったので、編…

映画「ドリトル先生不思議な旅」について

うちでは夫婦して映画「ドリトル先生不思議な旅」(リチャード・フライシャー監督)のファンである。しかし私はもっぱら、NHKで放送されていた宝田明が吹替したもののファンである。原典ではレックス・ハリソンは歌のところではほとんど歌っていないのだ…

「真田十勇士」声優の変更について

人形劇「真田十勇士」がNHKで放送されていた(1975-77)のは私の中学一、二年の時にあたるが、前番組「新八犬伝」の大ファンで漫画まで描いていた私は、75年の正月に、12チャンネルまでテレビの音声も入るソニーのカセットデッキを買い、「新八犬伝」の最…

凍雲篩雪(最終回)

凍雲篩雪(86)人類の敵、退屈 一昨年、実家を売ったのだが、最近ストリートビューで見たら、もう新しい家が建っていた。実家といっても、高校三年生の時から住んでいただけだが、それにしても感慨はないではない。草っ原だったところに建った新興住宅地だっ…

小・中・高校の校歌

埼玉県越谷市立出羽小学校校歌 緑は映えて空高く 風さわやかに野を駆ける 望み大きく 出羽の里 心豊かに 育ちましょう 出羽小学校のわたしたち 元荒川や綾瀬川 水は豊かに野を走る 開け伸び行く 出羽の里 強い体を鍛えましょう 武蔵野線やバイパスは われら…

チョムスキーの言語理論?その出発点から最新理論まで 作者: ニール・スミス,ニコラス・アロット,今井邦彦,外池滋生,中島平三,西山佑司 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2019/02/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る

松本清張「春の血」と「再春」

中野のお父さんは謎を解くか 作者: 北村薫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/03/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 隠花の飾り (新潮文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1982/08/25 メディア: 文庫 クリック: 2回 …

凍雲篩雪

凍雲篩雪(85)歴史学者の放言 一、年末から、hulu というところで配信しているトルコの大河ドラマ「オスマン帝国外伝」を延々と観ている。最初は二週間無料の間だけ観るつもりだったのだが、面白いというよりは妙にやめられなくなって有料になってからも観…

凍雲篩雪(84)

「ストーリー漫画の父」テプフェール: 笑いと物語を運ぶメディアの原点 作者: 森田直子 出版社/メーカー: 萌書房 発売日: 2019/02/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 一、小澤英実さんから、訳書であるロクサーヌ・ゲイの『むずかしい女たち』…

とちおとめのババロア 作者: 小谷野敦 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2018/11/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る

芋蛸なんきん

質問内容:「とかく女の好むもの 芝居 浄瑠璃 芋蛸南瓜」、という言葉は、検索すると西鶴のものとされていますが本当でしょうか、出典は何でしょうか。 回答:まず、「芋蛸南京」という言葉を複数の表記でインターネット検索したところ、詳細は不明なものの…

凍雲篩雪

凍雲篩雪(83)勝手に怯えてろ 一、数か月前の本欄で、「鳥潟博士事件」というのに触れて、菊池寛の『結婚街道』のモデルになったと近松秋江が書いていた、としたが、これは別の事件のことで、昭和七年十月、免疫コクチゲンの発見者としてノーベル賞候補にも…

汽笛一声

中村光夫の戯曲に「汽笛一声」というのがある。割と長く、明治初年を描いたもので、読売文学賞をとっている。『かまくら春秋』12月号の森千春の連載「花から読み解く文学57」で中村光夫がとりあげられ、この戯曲に「ひとこえ」とルビが振ってあった。いや「…