2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

怒りの書

必要があって、犬塚稔『映画は陽炎の如く』(草思社、2002)を拾い読みした。犬塚(1901-2007)は見ての通り106歳まで生きた脚本家、映画監督だが、これはその自伝とも言うべき、しかし相当の怒りに満ちた書である。犬塚は、「座頭市」が自分の創作である…

暗夜行路

藤枝静男の講談社文芸文庫『志賀直哉・天皇・中野重治』を、魔がさして買ってしまった。別に後悔はしていない。弟子である藤枝の、志賀に関する随筆・評論を集めたもので、最後に表題作が載っている。 しかし順番がおかしいだろうというのは、こう来たらまず…

武藤康史へご注進

講談社文芸文庫から出た里見とんの随筆集『朝夕』は、新編集ではなくて、もともとあったものを文庫化したもので、私は元本を持っているのでもちろん買わなかったのだが、某人から、巻末の著作一覧の文庫のところに、私が編纂した中公文庫『木魂・毛小棒大』…

鴎外の娘・小堀杏奴の『朽葉色のショオル』は、私は旺文社文庫版を持っているのだが、講談社文芸文庫版には年譜があって、長女・桃子は横光利一の次男・佑典と結婚、長男・鴎一郎は、嘉治玲子と結婚したとある。この玲子というのは、聖心女子大学名誉教授の…

前言撤回

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20111002 ここに書いたことだが、取り消す。というのは、「脅し」に至る経緯を冷静に見ればまったくひどいもので、ノイエホイエが、脅したほうがいいと判断したのは正しい、とせざるをえないからである。そもそも脅された…

サヨナラ、サヨナラ

淀川長治の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」は、当初回数が決まっていなかったが、回数で賭けをする子供がいると聞いて三回に決めたというのは有名な話である。 ところが高見順日記を読んでいたら、「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」というのは、『百万人の…

時岡四姉妹

『文學界』新年号に谷崎昭男「『細雪』もう一組の四人姉妹」が載っている。昭男は潤一郎の弟・精二の次男で、1944年生まれなので67歳。後妻の子なので若い。相模女子大名誉教授で、保田與重郎の弟子、保田全集を一人で編纂した人である。 内容は、『細雪』の…

http://naokiaward.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/36311956-6c06.html これを読んで、そうだそうだ、と思った。今東光が追放されたって、谷崎や川端がついているんだから、おいそれと完全追放ということはない。 その直後、平浩一という人の、もう一人の「…

『現代虚人列伝』という本があって、これは70年代に『現代の眼』に連載されたもの。その都度執筆者は違う。まあ左翼雑誌だから、保守派文化人を批判するもので、朝比奈宗源なんてのが筆頭に来る。江藤淳もいて、これは岡庭昇が書いているのだが、なぜかいき…

書店へ行ったら『深沢七郎外伝』という本が出ていた。外伝? 正伝はどこにあるの?って感じ。(相馬庸郎のが正伝なのか) こないださる魔女さんに神林長平を勧められたので『言壺』を読んでみたのは、SF大賞受賞作だからだが、未来のワープロみたいな機械…

『自慢するバカ』で一番読んでほしかったのは、文学俗物がありがたがるのは、吉田健一、内田百けん、ボルヘス、須賀敦子、尾崎翠、ってあたりだったんだけどな。あと白洲正子、はあれは文学俗物というより「和」俗物だな。(百けんの「けん」を正しく入れた…

虫プロが倒産したのは、1973年11月のことで、私は小学校五年生であった。『新八犬伝』を観ていた当時で、その日は月曜だったから、六時のテレビニュースで、それが流れたのであろう。「漫画家の手塚治虫さんの…」と来たから、台所仕事をしていた母が「えっ、…

図書館の変なおじさん

…まあ脇から見たら私こそが変なおじさんなんだろうが、今日図書館へ行くと、閲覧コーナーは、二つの丸テーブルと一つの長方形テーブルがあって、丸は椅子が四つ、四角は六つ置いてある。雨もよいの平日だからすいていて、丸一つにおじさんが座って何か読んで…