2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

晩春の一日 

郵便局のATMへ、国会図書館の郵送複写の料金を払いに行った。休日明けだし、明日土曜もATMはやっているはずだが、明日も休みかもしれないと思って来る人もいてか混んでいた。私の前の人がもたついている。その間どんどん待っている人が増え、遂に、60…

新機軸 

手塚治虫の『マンガの描き方』(1977)に「新機軸を打ち出せ」という節がある。その最後に、弟子たちが「新機軸なんて、手塚先生や石森先生がやっちゃって、俺たちやることないよなあ」と言うのを聞いて手塚が「ばっきゃろー!」と怒鳴りつけ、「自分で努力…

「イスラーム」の二重基準

http://d.hatena.ne.jp/kanimaster/20100425 ええと、一応元猫猫塾生徒さんなので解説しますがそういうことはジェラール・ジュネット『物語のディスクール』が基本書で、「神の視点」というより全知視点といいます。また三四郎は視点人物であり、作中内の語…

木下杢太郎が貰った匿名の葉書 

木下杢太郎というのは不思議な人で、太田正雄という医師で文学者である。しかし文学史に載っている初期の戯曲「和泉屋染物店」「南蛮寺門前」などという作品をいま読む人はほとんどいない。私はこれらは岩波文庫の復刊で読んだ。あと随筆が岩波文庫に入った…

川西政明の迷走  

ようやく駅前の書店に川西政明『新・日本文壇史』第2巻が入ったので立ち読みしてきた。確かに、参考文献には私の『里見とん伝』がなくて、私が参照しておいた大西貢の論文がずらりと並んでいる。 さて本文を見ると、里見とんは本名を有島英夫という、とある…

リスト「死のチャルダッシュ」

http://www.youtube.com/watch?v=l4oNJMpdkJE いくら言っても世間でゴジラのテーマだと言う地球防衛軍のテーマが聴こえる。しかしリストって正当に評価されていない気がする。 ところでこの曲は、音楽之友社から出ている『バルトーク物語』で知ったのだが、…

浅薄な「死」観 

『週刊ポスト』の井上ひさし家内紛の記事で「その死はあまりにも早すぎた」とあってげんなりした。75歳であるぞ。どこがあまりにも早すぎるのだ。死亡適齢期ではないか。それで早すぎるなら、中上健次や伊藤計劃はどうなるのだ。 「死者に鞭打つ」とか言って…

第二藝術論 

平川祐弘先生が東京新聞の書評欄で暴れん坊ぶりを発揮している。昨日は柴田依子(1938−)の初の単著『俳句のジャポニズム』。柴田は東大比較文学会会員なのだが、出身ではないし教えたことがあるわけでもない、不思議な人だ。送ってきたのを書評したのだろう…

大波小波は東京新聞の恥部 

http://d.hatena.ne.jp/jyunku/20100418 なんで『永井荷風伝』より先に文庫化されるのだ。私が『谷崎潤一郎伝』『里見とん伝』という題名をつけたのは秋庭太郎に倣ってのことだ。確か私は秋庭の私家版のニューギニア戦記を持っていたはず。 - 桜庭一樹は読書…

登山する者しない者

『剣岳』という映画を観たが、これでキネ旬三位というのは、まったく映画評論家はどうかしている。要するに雪山でロケをしたのが偉いというばかりの代物で、シナリオがまったくひどい。登場人物はみんな芝居がかった芝居をするし、むやみと哲学的、宗教的な…

途中で帰った上岡龍太郎

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20100415/p1 なんかトラックバックがあったので見てみたが、『探偵!ナイトスクープ』の「心霊事件」は、もし私が観たものだとすると、ここに書かれているのとはちょっと違う。 これは、部屋に女の幽霊が出る、という医学部学…

「やまうちようどう」の謎

『竜馬伝』で、山内容堂を「やまうちようどう」と呼んでいる。これは『功名が辻』の時に、従来やまのうちと読まれてきたが、浅井茶々の手紙と『寛政重修諸家譜』に「やまうち」とあるからと訂正したものだ。 しかし、それならいったいいつから「やまのうち」…

白石一文の反噬 

昨日の産経新聞で、こないだの直木賞をとった白石一文が、まだ小説を書く気になれずにいると書いている。いったい小説は社会を変えることはできない、そんなことでいいのかという。留保もなく書いている。 私は白石の受賞作をくだらないと思うが、当人も、直…

私もオタどんに倣ってゼロ年代(この言葉好きじゃないが)のベスト本をあげてみよう。 桃谷方子『百合祭』2000 加藤詩子『一条さゆりの真実』2001 酒井邦嘉『言語と脳科学』2002 猿谷要『ハワイ王朝最後の女王』2003 阿部和重『シンセミア』2003 沓掛良彦『…

ニーチェの無意味 

どういうわけかいつもハガキでブログなどの感想を言ってよこす大阪の山田氏より、私が死刑廃止はキリスト教の影響だというが、ではなぜキリスト教が支配的だった西洋中世には死刑があったのかと問うてきた。 なるほど、もっともな問いだ。しかし私は、キリス…

陳腐な合唱

ライターズ・ジム著となっているが、見崎鉄という人が書いた『謎解き「世界の中心で、愛をさけぶ」』を図書館で予約してようやく手に入れた。はじめのほうを読んで、そうだそうだと膝を打つ。 これがベストセラーになった当時、『いま、会いに行きます』など…

川上未映子はいじめっ子の味方か?

毎度言う通り私は新刊書を進んで読んだりしないので、今回論争の都合上『ヘヴン』を読んでみた。かねて、これはいじめっ子側に立っているとか賛否両論の小説だったが、またどういうわけか擁護するほうも狂気じみていた。私は毎度言う通りいじめっ子は死刑に…

ここは丸の内なのだぞ!

直木賞の歴史に泥を塗った、とは言うまい。過去の直木賞受賞作にも首をかしげるのはあるし、乙川優三郎『生きる』のように、継嗣もないのに武士が「隠居」したり、年代はきっちり書いてあるのに、将軍家光の死と重臣たちの殉死が無視されているなどというの…

戦後文学者チャート

ふと思いついて、こんなものを作ってみた。もちろん位置は暫定的なもので、政治的左右についてはっきりしている人もそうでない人も、前期と後期で変わった人もいるし、私小説云々についてはさらに分からないので暫定である。もっとも気づくのは、右側の上と…

栗原さんと枡野さんと豊崎さんへ

ツイッターでもめていたのを、栗原さんと枡野さんにはメールしたのだがどうしても埒が明かないので、ここでまとめて声明としておきます。 まず私は、前から「論者と論点を混同しない」ということをモットーとしておる。Aの言ったことでaはいいがbは良くない…

『黄落』の思い出

今ごろになって、佐江衆一の『黄落』(新潮文庫)を読んだ。95年、佐江が61歳になる年の作品で、藤沢市に住む老いた両親の話である。私小説はやはりいい、と思う。これは名作であろう。 ところで今読んだのに「思い出」というのはどういうことかというと、95…

苦労人・稲葉真弓 

稲葉真弓さんが、短編「海松」で川端康成文学賞を受賞ののち、同題短編集で藝術選奨文科大臣賞を受賞した。 稲葉さんは今年60歳だが、高校卒業後、23歳で中央公論社の女流新人賞を受賞した。しかし長く単行本を出すことができず、31歳で初の単行本『ホテル・…

高市早苗の夫婦別姓法反対論 

(活字化のため削除) - 確か私が大学生の頃だから、1982-83年くらいのことだが、民放の深夜の映画番組の司会を、飯干恵子がやっていた。当時まだ二十歳前くらいだったか、お下げ髪に近いような、いかにも良家のお嬢さんという雰囲気で、私はすっかり気に入…