2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

右翼が書いた大江健三郎論?

井上隆史『大江健三郎論 怪物作家の『本当ノ事』(光文社新書)を読んだ。井上は1963年生まれで、神奈川県の公立共学高校から一浪して東大へ入り、日本近代文学を専攻して三島由紀夫の研究者となり、今は平穏に白百合女子大学教授をしている。前の著書『暴流…

ある浄瑠璃研究者の前歴

神津武男(こうづたけお、1970年- )という浄瑠璃研究者がいる。2008年に、早大客員准教授だった時、香川県でコンビニのガラスを故意に割って現行犯逮捕されている。以前エンペディアに立項されていた時はそのことも書いてあったのだが、今では原版から削除…

音楽には物語がある(73)その時代を表す音楽  「中央公論」11月号

今年の大河ドラマは紫式部が主人公で、吉高由里子の紫式部と柄本佑の藤原道長の恋物語という驚くべき展開を見せている。今年の音楽担当は冬野ユミだが、ここしばらく、大河の音楽は昔のように、富田勲とか池辺晋一郎とかおなじみの作曲家が何度も担当すると…

シャインマスカット(創作)

シャインマスカット 小谷野敦 ごみを出しに行って戻ってきたら、何かを包丁で切る音が聞こえた。ちらりと妻の姿を見て、河原は自室へ入った。 椅子に座った瞬間、今でも煙草が喫いたくなる。七年も前にやめたのだが、最初の三年ほどはひどい禁断症状で、廃人…

川端康成と大正天皇の羽織

「夕刊フジ」創刊4号にあたる、1969年3月1日号の一面は、川端康成が前年のノーベル賞授賞式で着ていた羽織が大正天皇のものだという話で、弟子の北条誠の『川端康成・心の遍歴』(二見書房)に書いてあったのだが、発売後すぐ回収したという。 川端が、大正…