2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

渡辺一夫は小林秀雄の卒論を読んだか?

『一冊の本』の鹿島茂の連載が、小林秀雄を追及し続けている。小林の文章は非論理的なので外国語に訳せないと言い、あたかも長い箴言に時おりドスを利かせるようなものだが、箴言といえど論理はあるから、箴言ですらない、と言う。その通りである。 その後で…

歴史小説の進化

ようやく、林房雄の『青年』を読んだ。若いころ、小林秀雄が絶賛しているのを見て、へええいっぺん読んでみるかなと思いつつ、今日に至ってしまった。林房雄といえば、今では『大東亜戦争肯定論』で有名だが、若いころは左翼作家で、投獄されている最中にこ…

滝口順平といえばランカー

滝口順平が死んだのだが、滝口といえばランカーである。プリンプリン物語である。原作『ラーマーヤナ』のランカである。「プリンセスと結婚してプリンスになるのだ」と言っていたランカーは、48人くらい兄弟がいる貧しい家の生まれで一代で富豪となったので…

ずるいぞ笛吹童子

1977年4月から78年3月、NHKの人形劇は「笛吹童子」だった。それまでの辻村ジュサブローの人形からすると幼稚なひとみ座の人形で、そう面白くはなかったのだが、途中から出てくる胡蝶尼の人形が美しく、その頃ちょっと好きだった(人形愛か)。 その胡蝶尼…

あまりにも遅い博士論文

鈴木淳子さんの『ヴァーグナーと反ユダヤ主義』(アルテスパブリッシング)が出ていたので驚いた。 この人は比較の後輩なのだが、面識はない。三つ下なので、どこかで会っているのを知らないだけかもしれないが、ほかの同学年の人は知っているのにこの人だけ…

久米正雄伝補遺

『久米正雄伝』で、見つからないとしておいた、『現代文藝』昭和2年3月号が、昭和女子大にあるというオタどんの指摘で、ようやくコピーしてきた。 「文壇近頃のこと(二)久米正雄氏剽窃事件批判」として、出席者は安藤盛・松本清太郎・鳴海四郎・金兒農夫雄…

地震の三次災害

二次災害が放射能騒ぎだとすると、三次災害が、「反原発活動に熱心になっている知人に悩まされること」であろう。 香山リカは、反原発に熱心になっていて周囲から疎外されて孤立する女が多いと書いていたが、実際そういう女は多い気がする。 私の場合、一人…

江口榛一の伝を読む

和田芳恵の伝記を読んだ流れで同じ著者の『地の塩の人』という江口榛一の伝を読んだ。 詩人の江口榛一(1914−79)が自殺したという新聞記事は、私が高校生のころ、新聞に大きく出た。むろん私はその名を知らなかった。「地の塩の箱」という、寄付したい人が…

先妻を隠蔽する後妻 

私の『猿之助三代』の最大の功績は、隠蔽されていた二代目猿之助の最初の妻、つまり先代段四郎の母で、今の猿之助、段四郎兄弟の祖母のことを明らかにしたことだと自分では思っているのだが、言ってくれた人はいない。 要するにこの先妻の存在は、後妻となっ…

伊豆の踊子

美空ひばりの「伊豆の踊子」を観た。あれは筋が単純すぎるので、二時間弱の映画にするにもあれこれこしらえて入れ込む。ひばりがちっともかわいくないし声も悪いからまるでぶち壊しなのだが、驚いたのは石濱朗が川端康成に似ていることで、もちろん石濱のほ…

赤川次郎の現在

赤川次郎は、数年前に、たいへん造詣の深い人形浄瑠璃についての本を出したりしたので、もう従来の作家活動から足を洗うのかと思ったが、どうやら着実にシリーズものを出す人気作家であるようだ。赤川は、確かにうまい。しかし私なら、飽きてしまうだろう。 …

新八犬伝と真田十勇士

私は小学校五、六年のころ、NHKの人形劇「新八犬伝」を夢中で観ていたのだが、もちろん当時はビデオなどなく、しかし最後のぎりぎり、1975年1月ころ、テレビの音が入るラジカセを買って、音だけ録音した。犬江親兵衛が出現するあたりだ。 世間では「新八…

新刊です

小説集です。前にブログで前半部分を公開した「東海道五十一駅」、「あなたの肺気腫を悪化させます」と、未発表「ロクシィの魔」の三本が入っています。 東海道五十一駅 著者 小谷野 敦作者: 小谷野敦出版社/メーカー: アルファベータブックス発売日: 2014/0…

ホモソーシャルについて

前川直哉の『男の絆』について私が書いた一点のアマゾンレビューが時おり話題になるので、いちおう説明しておく。 上野千鶴子の『女ぎらい ニッポンのミソジニー』もそうだが、なるほど、こういうことは一般にはまだ知られていなかったのかと思ったもので、…

ある音楽 

「サンデー・ミステリー・ムーヴィー」といえば、あの『刑事コロンボ』を含むシリーズで、日本で、刑事コロンボの音楽だと思われているのは、このシリーズの音楽である、ということは、ファンなら誰でも知っていることだ。私は『警部マクロード』がひときわ…

須山静夫追悼文

http://plaza.rakuten.co.jp/professor306/diary/ もう24回になるが、須山静夫の追悼文である。7月に亡くなったのだが、新聞でも報道されなかったし知らずにいた。86歳くらいになっていたはずだ。 須山静夫といっても、世間では知られていないだろうが、かろ…

私の好きな映画

自分の好きな映画一覧などというのは、ナルシスティックだし、金井美恵子先生にバカにされること必定なので載せたくなかったのだが、私はこういう映画が好きなんであるから、君とは趣味が違うので、はなから近寄らないように、と警告するために載せることに…

これは必携だ

小学校時代のことを小説に書くのに、資料として買ったら、いろいろと懐かしいものが見られた。昭和ちびっこ広告手帳2 大阪万博からアイドル黄金期まで (ビジュアル文庫)作者: おおこしたかのぶ,ほうとうひろし出版社/メーカー: 青幻舎発売日: 2009/10/20メデ…

物理学者ランダウ スターリン体制への叛逆 山本義隆,桑野隆共編訳 みすず書房 2004.12構造以来の道 哲学論集1970-1993 トーマス・S.クーン みすず書房 2008.1

学問の方法 ヴィーコ 上村忠男共訳 1987.7 (岩波文庫)

数学の社会学 知識と社会表象 D.ブルア 古川安共訳 培風館 1985.6

歴史における数学 マイケル・S.マホーニィ 勁草書房 1982.4 「歴史の中の数学」ちくま学芸文庫

数学的発見の論理 証明と論駁 I.ラカトシュ 共立出版 1980.4

医学史と数学史の対話 試練の中の科学と医学/ 川喜田愛郎 1992.11 (中公新書)

==翻訳==

数学史対話 / 中村幸四郎 弘文堂 1987.12

科学史 弘文堂 1987.6 (弘文堂入門双書)

現代数学対話 / 弥永昌吉共編 朝倉書店 1986.11

wikipedia 佐々木力

==佐々木力==(ささき ちから、1947年3月7日- )は、科学哲学者、中国科学院大学教授、元東京大学教授。 宮城県生まれ。古川高等学校卒、1969年東北大学理学部数学科卒、71年同大学院修士課程修了、博士課程中退、東大教養学部研究生として科学史専攻、76-80…

同級生

吉沢雅隆 経済産業省関東経済産業局地域産業部長 http://www.ustream.tv/recorded/12946151 これは中学の落研の一年後輩。高校は浦和だったか、東大では同期。私の時の卒業式では送辞を読んでいた(私は送辞答辞無関係) 落研にいただけあって話がうまい。あ…

『久米正雄伝』に出てくる三宅恒方が死ぬまでの様子が、妻の三宅やす子の「三つの遺骨」(『三宅やす子全集』3)に描かれている。 - 藪禎子『野上弥生子』(新典社、2009)は、08年に死去した藪の遺著であり、最後に藪の年譜がある。高等女学校卒業後、北海…