「ルネッサンス巷談集」と「日暮硯」

岩波文庫赤帯に、フランコ・サケッティ「ルネッサンス巷談集」というのが入っている。14世紀イタリア小咄集で、「三百小咄集」というのが原題だが、300全部は残っていないらしく、うち75編を杉浦明平が訳している。読み始めてすぐ、「ああこれはつまらないやつだ」と思ったら、やっぱりそうらしい。だがその二番目にあった、「面白い鳥はないか」と言われて大きな鳥かごを作り、自分で中に入ったという話が、真田藩の「日暮硯」の最初の逸話に似ていたのが気になった。これは以前は恩田木工作とされていたが今では木工の事績をのちの人が書いたことになっている。藩主の真田幸貫に、小鳥を飼うよう進言した家臣がいて、幸貫は大きな鳥かごを作ってその家臣を中に入れ、鳥かごで買われる小鳥の気持ちを分からせたという逸話だ。ちょっとした比較文学的エッセイ。