2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

幕見席(1)

中学三年の川波真佐子が通っている公立中学校は、ちょっと見には分からないが、真佐子の家からは少し高いところにあった。だから、学校まで歩いていると、途中でしんどくなったり、汗をかいたりする。だが、それがちょうどいい運動になっているらしかった。 …

耕治人と川端康成と私道通行権

「そうかもしれない」などの「命終三部作」私小説で知られる耕治人は、川端康成に師事していた時期があり、しかし川端の妻の妹・松林から土地をあっせんされたものの、トラブルになり、被害妄想から、川端に土地をだまし取られたと思っていて、川端没後に発…

津原泰水と私

私が津原泰水という作家を知り、いきなり電話で話して面倒なことになったのは、ちょうど十年前、2012年9月のことだった。二歳年下の津原は、当時川上未映子とトラブルの関係にあった。これは2010年に川上が新潮新人賞の選考委員に抜擢された時、津原が異を唱…

音楽には物語がある(46)小林幹治と「みんなのうた」 「中央公論」10月号

前回触れた小林幹治という作詞・訳詞家については、ご子息で俳優・演出家の小林顕作さんに連絡をとって、いろいろご教示をえた。小林顕作という人はそれなりに知られた人で、私は毛皮族という劇団の「天国と地獄」という演劇をDVDで観たが、そこではプルート…

小説を読まない人

小宮彰さんの追悼文に、前川裕さんのものがあった。やはり比較の出身で法政大で英語を教えていて、「クリーピー」で作家になった人だが、前川さんによると、小宮さんは小説を読まない人だったらしく、「クリーピー」読んだよ、とだけ前川さんに言ったという。…

著書訂正

「里見とん伝」 間違いというのではないが、里見の正妻まさと愛人お良は、会ったこともないと思っていたら、何かあると相談して里見家のことを決めていたということが分かった(「かまくら春秋」2022年10月号、伊藤玄二郎発言)