2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「邪宗門」の事実

少し前にカニさんid:kanimaster が、芥川龍之介の「邪宗門」は、長編になるはずだったが中断してしまったと書いていた。私も長くそう思っていたのだが、どうも違うのではないか。 芥川は北原白秋を尊敬していて、だから始め柳川隆之介の筆名を使った。柳川は…

「中日新聞」「東京新聞」に渡部直己の「土曜訪問」インタビュー。抜粋。 学生を甘やかすつもりは一切ない。 「今の若者は自分の甘さに対する恐れがない。難解な文章に出会うと書いた方が悪いと思い、“上から目線”と言って避ける。けれど、“上”がなければど…

意味づけ歴史学

田中悟の『会津という神話』をようやく図書館から借りだした。五月に申し込んで今までかかったのである。何しろ本文は二百ページくらいなのに6500円という値段では、おいそれと買えないのである。 福島県民は山口県民を憎んでいる、といった話は、「探偵! …

高学歴者のおもちゃ

ミクシィを始めた頃だから、2005年くらいに日経アドレだかで取材を受けた治部れんげさんは、元マイミクだったが、何か嫌がらせを受けたとかでミクシィを抜けた。 以後接触はないのだが、昨年本を出したことを知った。74年生まれなのでいま36歳。26歳の時に夫…

横山孝一氏に送った手紙

住所が分からないので勤務先へ送っておいたからまだ見ていないかもしれないので公開書簡にしてしまう。拝啓 ようやく暑さも和らぎ始めたようですが、いかがお過ごしでしょうか。 さて、平川祐弘先生より、先生の書かれた『へるん』の文章の複写を送ってこら…

私の本の読み方 

私が本を手にするのは、八割方は調べるためで、当該個所を見たら終わりである。あと必要に応じて引く。 そうでなくて「読む」場合、古典的な作品は一応読む。50pくらい読んでも全然面白くなかったら放り出す。 最近の本で何か賞をとったというようなものの…

純文学作家はなぜ犯罪小説を書くか

何かと話題の吉田修一『悪人』を読んだ。私は吉田の「パーク・ライフ」をまったく評価していないし、『パレード』もどうということはなかった。前者は芥川賞、後者は山本周五郎賞受賞作で、『悪人』はある意味最高峰の一つである大佛次郎賞、そして毎日出版…

デヴィッド・ロッジを読まないわけ

http://www.pipeclub-jpn.org/column/column_01_detail_78.html 連載最終回です。 - デヴィッド・ロッジという英国の作家、英文学者がいる。大学内部をコミカルかつ風刺的に描いた小説で知られる。私は学部生時代に『交換教授』を読んで面白かったが、そう言…

私は素朴実在論者である

言語構築主義などというトンデモな代物があることを思えば、私は「素朴実在論」でいい。なるほど私も若くて愚かだった30歳頃には、素朴実在論なるものを馬鹿にしていたこともあったが、あれは単にものごとを深く考えていると思いこみたいインテリ病みたいな…

人間関係プロレタリアート

大学一年の時に「人間関係プロレタリアート」という言葉を見つけて、これだ! と思った。それこそがまさに、私が求めていた概念であったのだ。もちろん、自分がそうだという意味でである。しかし、サークルの読書会で、「それは××さんが人間関係プロレタリア…

研究には科研費が出るが翻訳には出ない。そのため、翻訳もされていない外国の文学者の研究書だけ出るという珍現象が起こる。アイヴィ・コンプトン=バーネットなどがそれだ。これは、小説の翻訳なら売れるだろうから援助は要らないという前提から来ている。…

ハイデッガーは呼び捨てする長谷川三千子

私は村上春樹を批判しているが、かつては涙を流して感動したこともあったし、「ああ、こういうのは受けるだろうなあ」というのは分かる。分かって批判しているのである。 それに対して、何で人気があるのか分からない、本気でどこが面白いのか分からない、と…

http://d.hatena.ne.jp/tonyu/20100913/1284379832 なんか抽象的議論が好きな人っているんだよね。単に私は、「中世とはいかなる時代か」とか、そういう意味づけは、しなくてよい、と言っているだけなのだ。それに、物理的事実は一つである。現に私の『里見…

猫猫塾夏期講座(文学)

http://www.pipeclub-jpn.org/column/column_01_detail_77.html 連載二回目です。「憎悪はもう…狂っている」はちょっと変ですね。 - 生徒:先生、小説とかを論じていて、「完成度」って言葉が出てきますね、あれは、どういう意味なんですか。 先生:お、それ…

民俗学と天皇制

笙野頼子の『金毘羅』の文庫版解説を安藤礼二が書いていて、最近笙野を論じられるのは安藤しかいないと栗原さんも言っていたけれど、やっぱり懸念を感じるのは、笙野が神社や神道にのめりこんでいくと最後は「右翼」になるんではないかということである。 も…

ヤンキーが行く大学

http://blog.goo.ne.jp/kuroko503/e/1100c0fcf99fdb7a971e2d6d8da3fc66 うーん、むちゃくちゃだなあ。立松和平の小説が絶対おもしろいとは、私にはとても思えないのである。いな、いかなる小説家であろうとも、どの作品もおもしろいなどということはないし、…

何を騒ぐか

戸籍上二百歳だの何だのと、何を騒いでいるのかと思う。これは『中央公論』の松原隆一郎が正しいので、年金の不正受給だけが問題であり、死亡を行政が把握していないというのは、リベラリストにとってはいいことではないか。まあ新聞を読んでいないから今ど…

「紅楼夢」のトランスジェンダー

http://www.pipeclub-jpn.org/column/column_01_detail_75.html 久しぶりのパイプクラブ寄稿。連載であります。 - シナ文学者・九大名誉教授の合山究は、『紅楼夢』の主人公賈宝玉は性同一性障害ではないかという説を立てている(『東方』2009)。しかしひと…

私が図書館へ行くと何かが起こる。 今日は、大きい机、座ると向かいに、男児が二人。どうも西洋人とのハーフらしい。左側が兄らしい。だいたい兄十歳、弟六歳くらいか。勉強しに来たのだろうが、当然、こちょこちょ何か言ったり、ふざけたりしている。少し様…

王様の耳はロバの耳

子供の頃、劇団四季のこどもミュージカルで「王様の耳はロバの耳」をやっていたのをテレビで観た。もちろん原作とは違って、最後は王様と、真実を求める民衆との戦いになり、歌合戦になって王が謝る。王をやっていたのは滝田栄。 耳がロバの耳になった王は、…

「テレビ欄」の仕組み

今やインターネットでテレビ番組の情報は分かるといっても、新聞の「テレビ欄」のあの簡明さには及ばない。だからもしネット上であの「テレビ欄」が見られるようになったら、新聞社は大打撃を受けるから、絶対それだけはやらないでくれとIT業者と申し合わ…

紅野謙介の偉業を読む

前からオタどんに教えられていた『週刊読書人』の、紅野謙介による川西政明『新・日本文壇史2』の書評をようやく読んできた。紅野は、川西を「百年後のパパラッチ」と呼び、その男女愛慾のさまをいかにもも見てきたように描くやり方を何とも巧みに揶揄描写…

そして新書が一冊没になった

その新書の原稿は春ごろには完成していたが、十月刊行予定とのことでだいぶ待たされた。東大卒、20代、男の編集者Kは、『大河ドラマ入門』でひどい仕事をした奴で、その時『小説宝石』で宮崎哲弥氏と対談した際も、再校ゲラで宮崎氏の直しが反映されていな…

オオカミ少年内田ジュ先生

話題の内田ジュ先生が、単に忙しいから休ませてほしいだけだと言っている。 このお方は、2002年いっぱいで文筆家を廃業すると朝日新聞で堂々宣言して、結局やめず、かつやめなかった理由についても説明していないウソツキジュ君である。 こんなことを言って…

狩野享吉と性

沼野大人ありがとうございます。しかし「一徹」って私は私小説だけ書いているわけではないので…まあご存知ですよね。 - 青江舜二郎『狩野亨吉の生涯』は、中公文庫になった際に「亨吉と性」の一章が削られてしまったので、そこだけ初版本からコピーした。こ…