2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

2023年度小谷野賞

小谷野賞の発表です。 橘玲・安藤寿康『運は遺伝する』(NHK出版新書) 特別賞 アビゲイル・シュライヤー『トランスジェンダーになりたい少女たち』(岩波明監訳、産経新聞出版)

エミール・ギメと「忠臣蔵」

エミール・ギメはフランスの富豪で、明治初期に来日して日本を見て回り、浮世絵などを大量に買い込んでフランスでギメ美術館を作ったり、日本についての著述をした人で、その挿絵を友人のフレデリック・レガメーが描いている。 そのギメの『明治日本散策 東…

高村光雲「幕末維新懐古談」レビュー

岩波文庫版で読んだのだが、これは青空文庫にも入っている(ただしバラバラなので注意が必要)。高村光雲の懐古ばなしを、大正11年に日曜ごとに光太郎と田村松魚が聞いて、松魚が筆記したものだが、ですますの語り口調でべらぼうに面白い。それはまあ、光雲…

石川淳「諸国畸人伝 改版」 (中公文庫)レビュー

「別冊文藝春秋」に1955年から56年まで連載された、十人の近世から近代にかけての工芸職人などの伝記集。大江健三郎が初めて石川淳に会った時この本をくれたというが、その後大江と石川の関係はやや曖昧模糊としている。 人は都々逸坊扇歌、鈴木牧之、小林如…

村上元三「五彩の図絵」

1973年6月14日から、74年9月14日まで、「朝日新聞」夕刊に連載された時代小説。中公文庫で上下二冊。背表紙の解説を書き写すと、 「元禄十五年十二月、赤穂浪士の討入りが、上杉家の若武者、春日今之助の運命を変えた・・・・・・。公儀に隠した城の修築、禁裡修復…

どう「黒幕」?

いま大河ドラマでやっている「長徳の変」についてウィキペディアで見ると、藤原道長が「黒幕」だと書いてあるのだが、どういう風に黒幕なのかは書いていないから分からない。 平安前期の「応天門の変」も、伴善男が応天門に火をつけて源信に罪をなすりつけよ…

「ですます体」の逆襲

日本近代文学史では、山田美妙の「ですます体」は、尾崎紅葉らの「だである体」に敗れたということになっているが、実際にはですます体はかなり根強く生き延びていて、最近の新書などはですます体が多いし、児童文学も以前からかなりですます体だ。ほかにで…

音楽には物語がある(65)作詞家の条件  中央公論・5月号

私が若いころ、歌謡曲好きの友人が「作詞をして当たったらいいなあ」というようなことを言っていた。作詞家というのがどれくらいもらえるのか、歌がヒットするとそれだけで儲かるのか、その後仕事が多く来るから儲かるのか分からないが、何しろ一つの歌の作…