「刑事コロンボ」と偽の記憶(ではなかった)

私は「刑事コロンボ」が大好きなのでDVDボックスも持っているのだが、そこで字幕版を観ていて、誰か女性が「インスペクター」と呼びかけてコロンボが「いえリュテナンです」と答える場面があり、吹き替えでは巧みに別の会話になっているのを発見したことがある。ところが今回、調べてみたら見つからない。とうとう旧シリーズ全話を観てしまったがなかったから、夢でも見たのか偽の記憶か、と憮然としてしまった。

(続き)しかし執念で「新・刑事コロンボ」を見始めたら、第二作「狂ったシナリオ」の最初のほうで、犯人ではない女性が盛んにコロンボを「インスペクター」と呼び、コロンボが「リュテナン」と訂正するシーンがあった。

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 なおコロンボのテーマ音楽は、昔初回放送時に流れていた「サンデー・ミステリー・ムーヴィー」のあれではなく、暗い色調の音楽で、これは「死者の身代金」でヘリコプターで帰ってくる時に流れる。あれは最初の回なのでオープニングも「ピーター・フォーク・アズ・コロンボ」ではなく「イン・死者の身代金」になっている。

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 あと「祝砲の挽歌」で犯人の大佐が葉巻を勧めるところで「ところで君のファーストネームは」と聞きコロンボが「それはカミさんしか使わないんで」と答えるシーンがあったが、ここは吹き替えで「酒はやるかね」という会話に変えられていた。

小谷野敦