2008-01-01から1年間の記事一覧

伝記は電光石火で

書店へ行ったら、明治の西洋美術移入の人、岩村透の評伝が出ていた(田辺とかいう年取った人、藤原書店)。こっ、これは今橋さんがミネルヴァで書くはずの・・・。今橋さん、もう書かないだろうなあ。伝記は電光石火、まだ執筆中かなと思わせておいて出さねばい…

ポストモダンとモダニズムと前衛はどう違う?

ノーベル賞をとったけれど飛行機恐怖症なので受賞式には行かなかったオーストリアのエルフリーデ・イェリネクの『ピアニスト』を飛ばし読みした。あの気持ち悪い映画を観てから。前に中込啓子の翻訳がひどいとか言っていた人がいたが、別にひどくない。単に…

子安宣邦のイデオロギー的偏見

子安宣邦が、書評集『昭和とは何であったか』で、角田房子の『閔妃暗殺』を批判していると「毎日新聞」の書評に書いてあったので、図書館へ見に行ったが、これが実にひどいものであった。『閔妃暗殺』(新潮文庫)は私も読んだ。この事件には、堀口大學の父…

『人間革命』の誤解

少し前、宮崎哲弥氏が映画『人間革命』を入手したと書いていたが、私もDVDを入手した。もっとも別に入手は困難ではなくて、シナノ企画で通販もしている。 何しろ丹波哲郎主演、橋本忍脚本、舛田利雄監督、伊福部昭音楽という豪華な映画だから、いきなりゴ…

眉唾「タコ」語源説

先日、「タコ」というのはいつから罵倒語になったのかと書いたら、こんな説があると教えてくれた人がいる。http://blog.livedoor.jp/miwobooks/archives/850383.html (なお大野智と書いてあるが大野敏明) しかし当該書を見ても、出典が書いていない。巻末…

倉本聰と野沢尚

シナリオ作家・推理作家の野沢尚が突然自殺したのは、4年前のことだ。その真相は未だ不明だが、NHKの特別版大河ドラマ「坂の上の雲」が原因ではないかとも言われている。 私は野沢の『破線のマリス』は、テレビ界の暗部を抉った傑作だと思っている。強い…

中村稔を信用しない

http://d.hatena.ne.jp/sheepsong55/20081213 私は、弁護士にして詩人、日本近代文学館名誉館長の中村稔という人を信用していないのである。それはまあ、何となく胡散臭い、ということであろうか。 この方は、栗原氏の本にも出てくる、山口玲子がNHKを訴…

童貞と似たもの

童貞が、女体とかセックスというものに過大な幻想を抱いているということはよく言われる。むろん、その期待がたちまち裏切られる、というものではないが、やがて幻想は減退していく。 これとよく似ているのが、定職のない大学院修了者が、「専任」に対して抱…

ああ、かわいそうなアカハラ・・・。何の罪もない小鳥なのに、いつの間にかその名は別の意味を持ってしまって・・・。 アカハラの時効三年というのは、裁判にした時の損害賠償請求の判例の話だろう。大学へ訴えるにおいては時効はない。第一、大学で「アカハラの訴…

信多純一氏の八犬伝論

長谷川三千子先生は、『民主主義とは何なのか』(文春新書、2001)で、ジョン・ロックを「ペテン師」と呼んでいる。読んだ時は驚いて、岩波文庫の『市民政府論』は後半しかないので、前半まで確認したことがある。 これに対して「ロッキアン」とか「ロッカー…

『年譜年表総索引』(日外アソシエーツ、1998)を入手した。最近、人物の年譜を探すのにわりあい手間取っているからである。もっとも、十年前のものだし、その後講談社文芸文庫が精力的に年譜をつけてくれているから、どの程度役立つかは疑問だ。 ところでこ…

田中純氏が、麻生建についての私の記述に異義を申し立てている。 http://news.before-and-afterimages.jp/C1884801429/E20081205110412/index.html 学者といえば、ヨコタ村上孝之のごとく、逃げ回るのが普通だと思っていたので、率直に思うところを書かれた…

「深み」などない所に深みを見る病

田中貴子さんは角田文衛のファンだなどと書いたが(『一冊の本』)、角田の「待賢門院璋子の月経周期」論を田中さんは批判していた(『歴史読本』2002年6月)。もっとも私の見るところ、この批判文の真の標的は山折哲雄である。『愛欲の精神史』は実にバカげ…

言論を裏から手を回して弾圧する、といえば佐藤優だが、丸山眞男もそういうことをしたことが、羽入『学問とは何か』で分かる。 かつて梶山力が訳した「プロ倫」を、梶山が32歳で死んだあと、大塚久雄が手を入れて共訳で岩波文庫から出し、のちに大塚が梶山の…

藝術院会員

(活字化のため削除) - 「ゼロアカ道場」に、「もういっぺんやってみない?」と三ツ野君にタクシー内から携帯で電話をかける東浩紀の映像があるが、明らかに「進め!(のち「進ぬ!」)電波少年」の悪人風プロデューサーの真似だな。 (小谷野敦)

羽入辰郎と市野川容孝

羽入辰郎の『学問とは何か』(ミネルヴァ書房)という大著は、先の『マックス・ヴェーバーの犯罪』に対する折原浩一派の執拗でかつヴェーバー教に凝り固まった攻撃への反論の書である。実に分厚い。 その中に、本論とはとりあえず無関係なエピソードとして、…

文句は単著を書いてから

『ユリイカ』12月号は「母と娘の物語」。でも母娘関係がいかに恐ろしいか、最初に力説したのは岩月謙司なのだから、それは忘れちゃいけないよ。 なかに金田淳子の「その後の『ホームレス化する大学院生』」というのが載っていて、これがなかなかおもしろい。…

違うと言っているのに

「ヘレン・ケラーの生涯を描いた「奇跡の人」の原作者が死去」。あれはヘレン・ケラーの生涯なんか描いていない。あれはサリヴァン先生が主役なのである。 木村毅の『大衆文学十六講』には、第一次大戦後の超人気作家として、エドガー・ウォーレスとホール・…

博士号をとろうとしている人文系院生に告ぐ

(活字化のため削除) (追記:言語学や心理学は理系だから博士号はあったほうがよい) (小谷野敦) (追記:不断見ていないブックマークを見たら、 「Britty 研究 うーん場合によりけりですよね。どこに就職するかにもよるし。旧帝大はいちおう教授はみんな…

以下に掲げるのは、二年前に一度掲げて削除したものである。これは当時阪大言語文化研究科の院生だった某君から来たもので、渡辺秀樹のさらなる悪業を暴露したものだが、当時その某君から懇願されて削除したもので、その際、某君が博士論文を書くまで待つと…

「新ゴーマニズム宣言」は、相変わらず佐藤優の言論弾圧との戦い編である。最後に、佐藤が、小林よしのりが先に撃ってきた、と言っていることについて、「いつから言論界には先に批判したやつが悪いというルールができたのだ。幼児のケンカか?」(大意まと…

先日、ヨコタ村上がつきあっている現ロシヤ人を特定した、と書いたら、それは多分別の人で、言語文化研究科の院生でウェブ上に名が出ていないロシヤ人もいる、と言語文化の院生から言ってきた。だから違うかもしれない。まあ12月にはそやつと結婚するのだろ…

『カムイ伝』に挫折した私

田中優子の『カムイ伝講義』の書評をいくつか見た。褒めてあったのは言うまでもないが、活字での書評は信用できないのでアマゾンを見たらまだ誰も書いていなかった。 私は2000年に田中と対談したが、その際田中は、これまでマンガは全然読んでこなかったので…

変身忍者嵐×快傑ライオン丸

私は小学校3−4年のころは特撮ファンだったが、『変身忍者嵐』は観なかった。同世代の関東地方の人なら分かるだろうが、『ウルトラマンA』の裏番組だったからである。ちょうど同じ頃に、『快傑ライオン丸』の放送も始まったので、いずれも時代劇の等身大変…

見つけてしまう

高橋大輔という、どこかで聞いたような名前のライターによる『間宮林蔵・・・』というのが中公新書ラクレで出ていたので立ち読みした。林蔵がアイヌの娘との間に儲けた子孫を探し出してきたのはお手柄だし、シーボルト事件を、林蔵の「密告」によるものとしてい…

国文学者が英語を読む

平川先生が『アーサー・ウェイリー』で、河添房江先生編集の『講座 源氏物語研究 第十二巻 源氏物語の現代語訳と翻訳』(おうふう)について、収められた論文の出来不出来が甚だしいと書いていた。私はこの本は河添先生から戴いて全部読んではいなかったので…

それは違う

『週刊朝日』の書評欄で亀和田武が、佐藤優の言論弾圧に触れている。そこで、佐藤が櫻井よしこと私に反論しない件で、私に対して言論弾圧をしたら、10倍返しの罵倒が来るだろうと書いているが、それは違う。佐藤は国家公務員であり、一般国民たる私にそんな…

小平麻衣子の更生

小平(おだいら)麻衣子という近代日本文学研究者がいる。今は日大教授だが、以前は埼玉大助教授だった。八年前に私は小平を批判したことがあるが、その際、その悪文家ぶりについて戯文を書いて、発表の機会がないまま眠っていた。さて今年、小平は博士論文…

リキとタカ

私の後輩に実村文という人がいて、いま某大学の准教授だが、私は彼女が大学院へ来た時、なぜか男だと思い込んでいて、「じつむら」などと読んでいたのだが、「文」といえば一般には女だろうになぜそう思い込んだか、しかしどうも男に見える字面である。あと…

ダグラムの感動

私は『太陽の牙ダグラム』が好きだった。ちょうど私の予備校生時代から大学二年にかけて放送されていた。おもちゃが売れたため異例の延長になったが、アニメ評論家の間ではひどく評判が悪いという、『ガンダム』や『イデオン』とは逆の結果となった連続アニ…