2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

シントトのはなし

新渡戸稲造全集を、図書館員が「シントト全集」と言ったという、『の・ようなもの』か、というような話が出ているというので、品川力『古書巡礼』(青英舎、1982)を図書館で借りた。品川という人は1904年生まれだからもう死んでいるだろう。 この人は図書館…

フランク・カーモウドが死んだらしい

91歳。http://www.biblio.co.jp/mokuroku/jihitsu.html これ、浅田彰、蓮實重彦、岸本葉子の生原稿とか、筒井康隆の返ってきたらしい葉書とか売っているんだが、浅田、蓮實はやっぱり安原顕からの流出なのかなあ。岸本さん、すごい。でもこれも編集者が流し…

「もてない男」の用例

『佐佐木幸綱歌集』(国文社、1977)の「月光の坂」冒頭に、こうある。 歌をつくりはじめた頃、失恋の歌はうたわぬと心に決め、そう書いたりもした。万葉集以来、恋歌といえば会えない相手を、去っていった女をうたうものと相場が決っている。歌人は歌をつく…

大阪時代に観ていたCMが懐かしい。http://blog.goo.ne.jp/kuroko503/e/2c7d8f30067bcfc9d429eb689d359a83 309年前から執筆していた黒古先生。しかし近代文学館に『週刊プレイボーイ』はないと思うんだが…・・。大宅文庫と混同しているのか(あった。69年か…

田中和生氏と私

変な題名をつけたが、これは「毎日新聞」の文藝時評で田中和生氏が私の小説を取り上げてくれたので、それに応答しようとしたのだが、「答える」というほどでもないので、困ってこうなったのである。 これは昨日の夕刊なのだが、ウェブ毎日新聞には「編集部の…

増刷への誤解

『武士の家計簿』が41刷で二十万部に達したというのを、小刻みな増刷だな、と言っている人を見つけて、やっぱり増刷って誤解されているなと思った。一回増刷で五千部くらいである。新書とか一般書はそんなもので、私も若いころは、初版二万部で20刷というの…

人脈が見える文章

『週刊朝日』で亀和田が、半藤一利と加藤陽子の『中央公論』での対談を絶賛しているのを見て、「はあ福田和也ラインかあ」と思った。この人はよくそういう人脈ミエミエの文章を書くのである。 - http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/yomiuri-20…

谷崎賞の憂鬱

谷崎潤一郎賞は阿部和重『ピストルズ』に決まった。まあ順当なところだろう。本来なら『シンセミア』で受賞すべきもので、もし報道などで、おっ谷崎賞、とか思って、まだ『シンセミア』を読んでいない人がいたら、こちらを先に読むことをお勧めする。 さて、…

やっぱり現代音楽は怖かった

諸井誠の『現代音楽は怖くない マーラーからメシアンまで』(講談社、1985)という本を見つけたので借りてきた。 私は、文学でも音楽でも「前衛」が苦手である。そこで、こういう題の本を見つけると(ほかにはたとえば『「ユリシーズ」演義』とか)、よしよ…

持ちネタ

『週刊読書人』の一面に「風花」じゃない、風なんとかいう無署名コラムがあって、そこに、瀬戸内寂聴が「奇縁まんだら」に書いた齋藤十一の話が引かれている。 要するに1957年瀬戸内が『新潮』に載せた「花芯」が性描写が過激だというので匿名時評で叩かれ、…

都市伝説再び

坪内逍遥が『小説神髄』で勧善懲悪を否定したとか言っている奴がいるが、ほとんど都市伝説で、そういうことを言う奴は『小説神髄』をちゃんと読んでいないのだ。いまちょうど岩波文庫で復刊して書店にあるから、ちゃんと買ってきて当該個所だけでも読むこと…

弱い立場

http://d.hatena.ne.jp/chinobox/20100817 千野さんの判断は別にいいのだけれど、少しでも仕事が欲しいライターだったら、この程度のことは我慢して、11月、12月の書評を引き受けるだろう。私であっても引き受ける。千野さんは多分大学の先生だから、強く出…

渡辺京二よ

石牟礼道子の『苦海浄土』の講談社文庫版(1972)に、渡辺京二が「石牟礼道子の世界」という長い解説を書いている。昔読んだはずだが忘れていた。石牟礼といえば、近代への呪詛と前近代の美化の傾向もあるひとで、それに対してあの渡辺京二が何を言っている…

マンボ!

バーンスタインの「ウェストサイド物語」の「マンボ」は、オーケストラ演奏の際は団員が「マンボ!」と叫ぶことになっているが、立ち上がるというのは初めて見た。なお「ウェストサイド物語」全曲版CDでは省略されていることが多いので注意。指揮はグスタ…

インターナショナル

私が『バカのための読書術』で、岩井克人の『貨幣論』に、『資本論』の冒頭部分は多くの人が暗記している、と書いてあったのを、そんな人どこにいるのだ、と書いた時のことである。高橋源一郎氏と対談したら、そこについて、1968年頃はみな暗記していたんで…

ギャグとストーリー

アニメ「サザエさん」はもう41年やっているから、原作以上の長きにわたることになるが、もちろん原作のネタなど使い尽くし、同じネタを何度も使いまわしてやっているのだろう。しかし思うに、一回読みきりというのは、漫画でもテレビでも、さぞ大変だろうと…

顔と実力

こないだ『眠れる森』を最後まで観て、初めてキムタクの演技がうまいことに気づいた。大河ドラマの主役をやった香取よりうまい。 今ごろ気づいたのか、と言う人もいようが、今なお、「顔がいいだけだろ」と思っている人もいよう。 俳優・歌手の顔がいいと、…

選考委員と大河小説

大岡昇平が『レイテ戦記』を出した際(一九七一年)、野間文藝賞の候補になりながら、選考委員の間から、文学作品というより戦争の記録なのでとかいって、候補から外してくれという声があり、大岡が怒ったという事件があった。『レイテ戦記』は毎日藝術賞を…

新・日本文壇史の間違いだらけ

川西政明『新・日本文壇史』第一巻 第二章 恋敵、久米正雄と松岡譲 ・漱石が死んだ時、久米と芥川だけが呼ばれた →危篤になった時点で久米、芥川、松岡、菊池は駆け付けている。夏目家ではわざわざ呼んだりしていない。菊池は漱石には一度会っただけで師事し…

ディケンズの百倍売れた作家

http://en.wikipedia.org/wiki/George_W._M._Reynolds 斎藤勇『イギリス文学史』によると、あと一人John frederick Smith というのもいたそうだが、ディケンズが大衆作家だったとかいうのは、こういう事実を知らずに言われているのだ。もちろん翻訳など一つ…

「看護婦」は差別語か

近ごろ「看護師ファシズム」と戦っている私である。男は看護士、女は看護婦でいい。法令上、両者を看護師にしたからといって、通称まで規制される必要など全然ないのに、まるで国が日本語を規制しているかのように(そんなこと憲法上許されないのに)思って…

本が書けない人たち

金×淳×も、『ユリイカ』などに著書の広告が出てはや二年。今私たちの興味関心は、これが三周年を迎えるか、どうかである。 私は三十歳の頃から、周囲の人たちを、編集者に紹介して著書を出させようとしてきた。今思えば、親切なようで、恩に着せようとしてい…

私の行きつけの図書館に、むやみと「ありがとうございます」を連発する図書館員がいる。おそらくこの四月から入った女性で、アニメ声で、ワンアクションごとに言う。図書館というのは、税金でまかなわれた公共サービスだから、利用する権利があるのは当然だ…

羽仁未央

私が高校生の頃、羽仁未央ってのはちょっとした知的アイドルだったのだ。左幸子の娘だから、美人じゃないけどキュートで知的で、よく考えたら何者だかわからなくて、羽仁進の娘でしかないのだが、当時そういう子はいなかったから。まあ今でもいないのだが。…

もちっとホットケーキ

ふとコンビニで買った敷島製パンの「もちっとホットケーキ」を朝食にしたらやみつきになっている。どら焼きくらいの大きさのホットケーキ二枚の間にメープルシロップとマーガリンが挟まっているのだが、これが焼いて食べるとうまい。イチゴとホイップをかけ…