2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「青の世代」の復興 

「内向の世代」からあと、作家は世代区分をされなくなった。実は77年ころ、小田切進が「青の世代」と名づけたのだが定着せずに終わった。そこで「青の世代」復興計画として、だいたい1970年代半ばから80年代半ばまでに登場した作家を挙げると、 青の世代 194…

純文学は映画化されない

東 ところが、このあいだ宇野常寛さんに聞いたら、二〇〇八年に純文学作品で映画化され劇場公開された作品は、小谷野敦原作の『童貞放浪記』だけらしいですね。 http://www.shinchosha.co.jp/shincho/201001_talk02.html|立ち読み|新潮|新潮社【特別対談】…

第19次『新思潮』

明治末期以来の伝統をもつ同人誌『新思潮』は、1976年から79年まで第19次が出たのが最後になった。東大生が中心だが、木下渉という人がいるが、これは消息不明。藤田衆という人は今は名城大学教授らしい。 ほか、沼野充義、松浦寿輝が詩を書いていて、沼野は…

混同しやすい

『私は猫ストーカー』という猫マニアのための環境ビデオみたいな退屈な映画を観ていたら、古書店で働いているヒロインに、青年が話しかけて「ルイス・シンクレアの『バビット』はありませんか」と言い、「シンクレア」について一席ぶつのだが、それを言うな…

『徳川家康』と日米ソ

http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2010/012401/index.html 紀田先生ありがとうございます。 - 『大河ドラマ入門』で、山岡荘八の『徳川家康』が、今川をソ連、織田を米国、松平家を日本になぞらえたものとされた、とあるのは逆で、今川が「…

文化手帖

http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1380183/ ああ、配っているのか。私はもう15年くらい毎年この「文化手帖」を買って使っている。初めは八重洲ブックセンターで見つけて買ったのかな。最近は潮に直接注文している。なぜかアマゾンとか潮のウェブサイトに…

『大河ドラマ入門』の製作工程

恐ろしい間違いが次々見つかる『大河ドラマ入門』だが、そのほとんどは編集者が勝手に直して間違えたものである。 これは十月ころ執筆が決まり、ほどなく、新しい大河ドラマが始まる一月に出したいという話で、十一月前半に書き終えたが、普通はまず、著者が…

小説の登場人物が間違いを言うとき

小説の登場人物が、間違った知識を口にするということがある。阿刀田高が書いていたと思うのだが、作者としてはそれを放置してはいけない。いちばんいいのは、そこでの別の登場人物に訂正させることだ。 「ニュートンはリンゴが落ちるのを見て引力を発見した…

鴻巣友季子の日本語と原爆ファシズム

西部邁先生が東大を辞めたあと、学生らを集めて喫茶店で経緯説明みたいなのをしたのは前に書いたと思うが、結局西部先生を怒らせてしまって、その時「あんまり老人をからかうもんじゃない」と言って怒ったのだがあの時先生はまだ48歳だった。 - 「死んだ人は…

寺脇研が間違っていたわけ

私の中学時代の、大学出立ての若い女国語教師は、教科書に「冷厳(だ)」と書いてあるのを見て、生徒が「れいげん」と読んだら「れいだ」と訂正し、生徒が疑念を表明したら「ほら」と教科書を示し、生徒らから訂正されていた。そんなものだ。そんな国語教師…

貴乃花頑張れ

大相撲初場所後の2月1日に予定されている日本相撲協会の役員改選で、二所ノ関一門を離脱して理事への立候補を表明していた元横綱の貴乃花親方(37)を支持する若手親方ら6人が19日、同一門から事実上の破門となった。 一門の幹部は「破門ではない。考…

国会図書館郵送複写

最近は、論文の複写郵送に頼ることが多くなった。カネはかかるが、国会図書館へ行って探して複写する手間に相当する。 で届いてから郵便局で支払うのだが、ATMを使うと80円の手数料がかかる。先日ふと、ゆうちょ銀行からの振り込み(手数料なし)にしてみ…

貧農史観の見直しの見直し

呉智英さんも書いていたが、徳川時代の米穀生産高と武士の人口の少なさを根拠に、農民は十分米を食べていたという話。これはよく考えると、都市部の町人に行った分とか、豪農層が蓄えた分とかを計算していないから変なので、それに何より変なのは、もしそん…

読まなければよかったのに日記

私が大学院生の頃、米国から来ていた日本学者が研究室にいて、話しているといかにも優秀そうだったがまだ著書はなく、論文の抜き刷りを配っていた。しばらくして、某助手氏が「論文、読まなきゃよかったな」と言ったのは、存外ダメでがっくりしたという意味…

新刊です

中島敦殺人事件作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 論創社発売日: 2009/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (10件) を見る 説明しますとこれは小説です。表題の長篇に「天皇の煙草」(ブログ上では削除済み)がついています。…

トゥーランドットの原典

以前、最上英明という香川大学教授の論文を見て論文を書いた。トゥーランドットの原作がゴッツィの戯曲であり、さらにその原典がペルシアの説話集『千一日物語』からだというもので、『なぜ悪人を殺してはいけないのか』に収められている。論文は『比較文学…

大友克洋的問題

私はどうも、というか全然、押井守というアニメ監督のどこがすごいのか分からない。「アニメでハードボイルドやってます」という感じしかしなくて、筋立てがちっとも面白くないのである。もうこの押井守との相性の悪さは、『うる星やつら』の原作からして面…

戦後文藝時評小史

新聞の文藝時評というのは明治期からあって、近松秋江、正宗白鳥、また大正から昭和の川端康成、小林秀雄などが有名だが、一人の人が一新聞の時評を続けて担当するようになったのは戦後のことで、それにつき小史を掲げておく。当初は、文藝雑誌の新年号が12…

大塚ひかり訳源氏の完成

ちくま文庫『源氏物語』最終巻が届いた。「谷崎源氏」完成時(刊行はまだ)の泉鏡花の祝電鏡「ムラサキノハナマヅヒラク ゴホンクハイサコソオイハヒマウシアグ」。返電「ムサシノノクサヲユカリノカゴトニテイマムラサキノハナモハヅカシ」。 - 『かもめの…

インテリの大河ドラマ嫌い

『大河ドラマ入門』の寄贈者リストを作っていて、いつもは本を送っている人をばさばさ削ることになった。つまり興味がないだろうということで、要するにインテリは大河ドラマを観ないのであり、私は大学院へ入ってから、大河ドラマが好きだという学者に会っ…

トラックバックをたどったらこんな日記を見つけた。その人の父親は子供が生まれたとたん煙草をやめ、ヘヴィースモーカーである祖父つまりその父の父に、孫の前で吸うなと厳重に言い渡したというのだが、その人自身もそれをよしとしているらしい。 しかしそれ…

大河ドラマに革命が起きた

うーんまた坂本龍馬かよと思っていたら驚いた。『坂の上の雲』もそうだったが、NHKに何が起きたのか。この20年「江戸ブーム」で、それ以前の、厳しい身分制社会、貧農史観は過剰に見直されてしまって、インテリでさえ「お江戸でござる」的にみんな明るく楽し…

早稲田的なもの

http://d.hatena.ne.jp/maonima/20100102/1262442473 早稲田を出たから早稲田的というわけではない。加藤典洋や柴田元幸、庄司薫なんか東大卒でも早稲田的だ。 アーウィン・ショーの「夏服を着た女たち」なんか早稲田的だな。 村上春樹がもちろん今では最も…

永田久光『女にもてない本』

永田久光(1921-?)は広告研究をした業界人でつまり糸井重里+三浦展みたいな人でその方面の著作が多い。最後はなぜか共産党関係の本が三点くらいある。『女にもてない本』は1961年、青春出版社、私が入手したのは63年の7刷。売れたのだ。 内容は、女にもて…