2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「大谷崎」の解説

私は谷崎潤一郎が「大谷崎」と呼ばれるのは、三島由紀夫や小林秀雄が勘違いした「偉大だから」「おおたにざき」なのではなく、弟の精二も作家だから「大谷崎(だいたにざき)」「小谷崎(しょうたにざき)」なのだと言ってきたが、疑念を差し挟む人がいるの…

井上一馬『『若草物語』への旅』アマゾンレビュー

若草物語への旅 星4つ - 評価者: 小谷野敦、2025年11月19日 私は「赤毛のアン」が大好きなのに、「若草物語」はどうしても好きになれない。それで本書を読んでみた。これは書き下ろしの歴史文学紀行だが、第一章の一部は『別冊文藝春秋』に載ったということ…

金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」アマゾンレビュー

柴田錬三郎賞受賞作なので、娯楽小説として見ると、真ん中へんのストーリー展開はうまいし、前半は文章もよく統御されているが、ライが消えてからは話の落としどころが分からなくなって迷走している。特に母親に対する態度や考え方は、40年前の少女マンガが…

渡辺淳一と亀井勝一郎

渡辺淳一の初期短編「訪れ」(『文藝』1967年12月号)を読んだ。これは直木賞候補になっており、文庫『死化粧』に入っている。ちょうど一年前に死んだ亀井勝一郎が「K氏」として登場する。渡辺が同人雑誌賞をとって東京の授賞式に行った時に「K氏」と会うが…

「バニー・レイクは行方不明」と七瀬シリーズ

1965年の「バニー・レイクは行方不明」という英国映画がある。私は一度観たのだが、どういうわけかこの題名が覚えられず、「ペニー・レインは行方不明」で検索して、あれ、ないな?と思っていた。2005年のジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」の元…

吉村昭の『破船』と「日本残酷物語」

吉村昭は、純文学のほかに多くの歴史・実録小説を書き、もっぱらそちらで人気のある作家だが、中に『破船』(1982)というのがある。中編小説程度の長さだが、タイトルは久米正雄が、松岡譲と恋の鞘当てをしたのを書いてベストセラーになった『破船』と同じ…

楊双子「台湾漫遊鉄道のふたり」アマゾンレビュー(非掲載)

ポリコレなラノベ 2点 昭和13年に台湾を訪れた日本人作家の青山千鶴子と、台湾人通訳の王千鶴の「食べ物」をめぐる「百合」小説で、味わいはほぼラノベである。最後のほうで、台湾人による日本支配への批判が立ちあがるが、これのために全米図書賞を受けたの…

川村二郎『限界の文学』(1969)を読む

近ごろ、文藝評論は滅びるとか、小説家が文藝評論を書き出したとか言われているし、昔の文藝評論はどんなだったのかと、川村二郎(1928-2008)の『限界の文学』という、講談社が設定した亀井勝一郎の第一回受賞作に目を通してみた。この亀井勝一郎賞という…

アレクサンドリア四重奏

ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア四重奏』は、「ジュスティーヌ」「バルタザール」「マウントオリーブ」「クレア」の四部作だが、私はその全部を訳した高松雄一に英文科で教わっておりながら、「ジュスティーヌ」一編だけ読んで退屈だったので以後読ま…