小説の登場人物が間違いを言うとき

 小説の登場人物が、間違った知識を口にするということがある。阿刀田高が書いていたと思うのだが、作者としてはそれを放置してはいけない。いちばんいいのは、そこでの別の登場人物に訂正させることだ。
 「ニュートンはリンゴが落ちるのを見て引力を発見したわけだし」
 「いや、それはまあ後世の作り話で」
 といった具合である。
 しかし逆に、登場人物がものを知り過ぎている、という例のほうが実際には多い。『1Q84』で川奈天吾が、森鴎外の『山椒太夫』と聞いてすぐ、「大正時代の作品」などと思うのもその一例だ。ここは、「明治時代の作品か…いや、大正に入っていたかな」くらいにしておくのがベター。