第19次『新思潮』

 明治末期以来の伝統をもつ同人誌『新思潮』は、1976年から79年まで第19次が出たのが最後になった。東大生が中心だが、木下渉という人がいるが、これは消息不明。藤田衆という人は今は名城大学教授らしい。
 ほか、沼野充義松浦寿輝が詩を書いていて、沼野は道吉昭治の筆名を使っている。一号には、立教大学教授の小嶋菜温子が書いており、下條信輔、丹野義彦といった意外な名前もあり、東大外からは川崎賢子が参加、あと関西大教授の澤井繁男が本名(茂夫)で参加、東大教授の菅原克也も小説を書いている。『新思潮』は、第二次から、和辻哲郎後藤末雄など学者になる人が多かったが、蟻二郎がいた16次も学者になるのが多かった。下條が小説を書いているが、のち作家になったのは、詩を書いていた松浦くらいだろう。
 これは四年やって五号しか出なかったが、これで『新思潮』は31年途絶えている。なおこの頃、太宰治賞の予選通過作品を見ると、小見さゆり、盛田隆二などの名が見える。