1965年の「バニー・レイクは行方不明」という英国映画がある。私は一度観たのだが、どういうわけかこの題名が覚えられず、「ペニー・レインは行方不明」で検索して、あれ、ないな?と思っていた。2005年のジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」の元ネタといわれ、ロンドンへ越してきた女性が、自分の娘のバニー・レイクがいなくなった、と言っているのに、警察が捜しても出てこず、周囲の人物でもそんな娘は見ていないと言うので、主人公の妄想ではないかと思われるが、最後に発見されるというサスペンスものだ。ここで重要なのは、映画の観客もバニー・レイクの姿を見せられていないので、途中で、この主人公は頭がおかしいのではないかと思ってしまうことである。これに対し「フライトプラン」では、姿を消す少女の姿を観客は見ているからそういうことはない。
ところが怖いのは、統合失調症患者がこの映画を観ると、勇気づけられてしまうということがあるからだ。
筒井康隆の「七瀬シリーズ」も、主人公の火田七瀬はテレパスで、そのため続編「七瀬ふたたび」では謎の組織から超能力者たちが命を狙われるという展開になるが、これも統合失調症患者は自分がテレパシーが聞こえると思うことが多いため、筒井を「理解者」だと思って手紙をよこす吉外がいたらしい。