柴田錬三郎賞受賞作なので、娯楽小説として見ると、真ん中へんのストーリー展開はうまいし、前半は文
章もよく統御されているが、ライが消えてからは話の落としどころが分からなくなって迷走している。特
に母親に対する態度や考え方は、40年前の少女マンガが親に対してとっていた態度と変わらず、「キャバ嬢
やホストといった社会のアウトサイダーが正しく、普通である母親は間違っている」という思想で、凡庸
でさらにポリコレが入っていて良くない。そこから遡って考えるとこのユカリという主人公は銀行員だと
いうことになっているが、銀行での描写はほとんどなく、オタクで腐女子だから浮いているとか27歳で恋
愛経験がないとか書かれつつ、この小説内では誰からも好かれて、言葉も巧みに制御された人物になって
おり、「暗夜行路」みたいに、ユカリ一人まかり通る小説になってしまっている。しかし「腐女子」と言
いつつ、フィクションの中の一人に「推し活」しているだけで、BL化していないようなのは何かの戦略な
のだろうか。母親のシーンがなければ三点だった。