2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「ヌエのいた家」短評

【ぴたっとライフ】<大人の本棚>「ヌエのいた家」 小谷野敦著 2015.06.30 夕刊 主人公は父を「ヌエ」と呼ぶ。元職人のヌエは教養に乏しく、「死んじまえ」と妻に暴言を吐く人物で、長年にわたり憎悪の対象だった。そんなヌエが惨めに死にゆく。幼少期から…

尾崎一雄の「ある私小説家の憂鬱」(『小説新潮』1959年10月)は、『愛妻記』という、尾崎の「芳兵衛物語」を原作とする映画の話が持ち込まれた時のことを描いたものである。普通なら随筆だが、尾崎だから小説である。尾崎原作の映画は、最初が「暢気眼鏡」…

凍雲篩雪

山家悠平『遊廓のストライキ 女性たちの二十世紀・序説』(共和国)がわりとよく書評されているが、私が覗いた限りでは、特段オリジナルなことが書いてあるとは思えなかった。ただし覗いただけなので、ここがオリジナルであると教えてもらえたらありがたい。…

共著・編

『京都図案家銘鑑』編 近代美術工芸社 1922 『帝国美術院の権威』芳川赳共著 美術春秋社 1930 『恩師を語る 京都篇』芳川赳共編 美術春秋社 1931 『日本美術院』芳川赳共著 美術春秋社 1931 西村五雲, 加藤英舟『岸竹堂伝』編著 荘人社 1932 『現代日本画家…

豊田豊著作一覧

『現代画壇の巨匠』美術春秋社 1928 『栖鳳大観比較論』美術春秋社 1930 『伴大納言絵詞』出版タイムス社 1931 『仇討輪廻 戯曲集』全線社書房 1933 『荒野の獅子・狩野芳崖 戯曲』資文堂出版部 1934 『古画 評論随筆編・画人談話編』古今堂 1934 『演劇酔談…

歌舞伎役者の憎々しさ

豊田豊という美術評論家・劇作家がいる。1900年京都生まれで、1933年11月東京劇場の「国芳出世」という芝居を書いている。著作は多いのだが、履歴などはまだ不明、没年も不詳だが、戦後まで生きていたかどうか疑わしい。 その豊田の『演劇酔談』(1936)は、…

いったいいつから、殺人犯が手記を刊行してはいけないということになったのだろう。では永山則夫は、佐川一政は、木嶋佳苗は、永田洋子は。いやほかにも手記はたくさんある。 つまり少年法によって、二人殺しながら死刑にならなかったのが許せんと言うなら、…

小説は文学ではない

荒川洋治さんから、新著『文学の空気のあるところ』を送って貰い、ぱらぱら読んでいたら、横光利一が「文学は小説ではない」と発言した、とあった。そして広津和郎がそれに応じて書いた「『文学は小説ではない』について」(『文藝懇話会』1936年1月、『文学…

なりんぼ

宇野信夫の自伝的著作『むかし恋しい』(河出書房新社、1986)を読んでいたら、中学生の時、漢文の池本という先生がいて、皮膚が綺麗だったので「なりんぼ」とあだ名をつけたという。この池本が転出の際、生徒らに、「なりんぼ」というあだ名は迷惑であった…

バーバラ・レオニ・ピカード(1919-2000)という英国の児童文学作家がいる。岩波から、『オデュッセイア物語』や『イーリアス物語』が出ている。私は大学時代、『剣と絵筆』(原題はOne is One)というファンタジー成長小説を読んで同人誌で書評したことがあ…

童話劇小雀座

http://www.fureai.or.jp/~t-mura/tooryanse.html ここに「小雀座」というのが出てくるのだが、金田一先生の『十五夜お月さん』を見ても詳しいことは分からなかった。 当時の新聞でも劇評はなくて広告だけ見つかった(もっともちょっと見ただけ)。「小雀座…

http://banyahaiku.at.webry.info/201506/article_13.html 「すぐれた俳句の翻訳はその国の言語に革命を起こす」ってそれは誰の学説であろうか。そういうことを言っている言語学者がいるのだろうか。いるなら論文をあげてほしい。 夏石番矢の俳句が良かった…

2014年度小谷野賞

さて、2014年度小谷野賞を発表する。 ・受賞 NHK−BSプレミアム「ワイルドライフ」「巨大魚イトウ王者への道を突き進め」 http://www.nhk.or.jp/wildlife/program/p175.html ・奨励賞 鈴木大介 『家のない少女たち』などの一連の著作 ・特別賞 群ようこ …

文庫解説の気味悪さ

文庫版というのは、基本的に解説がついている。昔は文庫といえば古典的名作が入ったのでいいのだが、今では様変わりした。文庫オリジナル小説にはもちろん解説はないのが普通。 さてそこで気持ち悪いのが純文学の文庫解説である。だいたい解説は、元本が出た…

新刊です

俺の日本史 (新潮新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/04/17メディア: 新書この商品を含むブログ (9件) を見る訂正 24p「知多半島あたりで・・・」椰子の実が流れついているのを見たのが柳田で、それを島崎藤村に教えて「椰子の実」ができ…