「ヌエのいた家」短評

【ぴたっとライフ】<大人の本棚>「ヌエのいた家」 小谷野敦
2015.06.30 夕刊 
 主人公は父を「ヌエ」と呼ぶ。元職人のヌエは教養に乏しく、「死んじまえ」と妻に暴言を吐く人物で、長年にわたり憎悪の対象だった。そんなヌエが惨めに死にゆく。幼少期からの家族模様を回想する主人公に、父に対する複雑な感情が湧き上がってくる−。父と息子のねじれた関係が冷徹な目で捉えられている。(神戸新聞