2014年度小谷野賞

 さて、2014年度小谷野賞を発表する。
・受賞 NHK−BSプレミアム「ワイルドライフ」「巨大魚イトウ王者への道を突き進め」
         http://www.nhk.or.jp/wildlife/program/p175.html
・奨励賞 鈴木大介 『家のない少女たち』などの一連の著作
・特別賞 群ようこ これまでのエッセイスト・作家としての業績に対して
・特別賞 カゴ直利 死去されていたことが判明したため、その歴史漫画の業績に対して

 正賞は書籍に対して与えられなかったが、これは考えた末のことで、今のところ、2014年刊行の書籍で、感心した、というものがない。ツイッターで推薦を頼んだのだが反応はなかった。
 だいたい、2014年は、書籍よりも、テレビの映像などで伝えられるニュースのほうが面白かった年で、大宅壮一ノンフィクション賞にしても、それをまとめたものである。
 紙の本かデジタルか、などと議論しているが、実際には紙だろうがデジタルだろうが、書籍という形が衰退していると私は思う。一冊読み通して面白い、という本がない。これは要するに、書き尽くされたからである。私個人は、これを調べて書いたら面白いだろうというアイディアはあるが、それを書いてくれる人がいない。
 むしろ現在は、断片的に伝えられる情報のほうが面白いという時代である。サントリー学芸賞受賞作にしても、授与はしているがここ数年、不作である。
 特別賞の群ようこさんは、かつてカナダ留学中に私を楽しませてくれたエッセイの書き手だが、いまだそれらしい賞をもらっていないので、ここにあげた。
小谷野敦