なりんぼ

 宇野信夫の自伝的著作『むかし恋しい』(河出書房新社、1986)を読んでいたら、中学生の時、漢文の池本という先生がいて、皮膚が綺麗だったので「なりんぼ」とあだ名をつけたという。この池本が転出の際、生徒らに、「なりんぼ」というあだ名は迷惑であった、床屋へ行ったらじろじろ主人に見られて「あとで来て下さい」と言われた、とあった。
 はて「なりんぼ」とは・・・。ハンセン病患者のことであった。矢内賢二の『明治キワモノ歌舞伎』によると「難倫坊」と書くらしい。当て字だろうが。