バーバラ・レオニ・ピカード(1919-2000)という英国の児童文学作家がいる。岩波から、『オデュッセイア物語』や『イーリアス物語』が出ている。私は大学時代、『剣と絵筆』(原題はOne is One)というファンタジー成長小説を読んで同人誌で書評したことがあったのを思い出した。
 そのピカードの岩波のものは高杉一郎が訳しているのだが、今回人に教えられて、その『イリアッド物語』の訳者あとがきに、高杉の妻がピカードに書いた手紙の返信の翻訳が載っている。1970年のもので、なんで妻が手紙を書いたのか分からない。高杉の妻は宮本顕治の二人目の妻の姉らしい。そこでピカードは、今度は義経と弁慶のすばらしい物語を書いてみたい、としている。だがピカードのその後の著作を調べても、そういうのは出てこない。
 ピカードは日本人への挨拶としてそういうことを書いたのだろうが、どこで義経と弁慶の物語を知ったかといえば、1966年にヘレン・クレイグ・マッカラが英訳した『義経記』でであろう。マッカラはアメリカ人だが、ピカードとは一歳違いで、何か関係があったのかもしれない。