「真田十勇士」声優の変更について

人形劇「真田十勇士」がNHKで放送されていた(1975-77)のは私の中学一、二年の時にあたるが、前番組「新八犬伝」の大ファンで漫画まで描いていた私は、75年の正月に、12チャンネルまでテレビの音声も入るソニーカセットデッキを買い、「新八犬伝」の最後の箇所と「真田十勇士」を録音した。といっても中学生で全部録音して保存する財力はないから、全部録音はしたが消してしまったのも多い。

 「真田十勇士」は、あまり視聴率が良くなかった。第一、暗かった。それで二年目に模様替えをした。ナレーションを酒井アナウンサーから熊倉一雄に変えて、低年齢層向けにしたが、声優もわりと変わった。一年目は松山省二が、主役の猿飛佐助、真田幸村柳生但馬守などを一人でやっていたが、松山がいなくなり、佐助は関根信昭、幸村は木下秀雄、但馬守は熊倉に代わる。名古屋章岸田森は全編通していろんな声をやった。三谷昇も一年目でやめ、服部半蔵八木光生に、由利鎌之助は木下に代わった。

 ところが今回録音を聴きなおしていて、松山省二が一年目の最後にもういなくなっていたことに気づいた。一年目の最後は、為三による江戸城焼き討ちと、柳生十兵衛真田昌幸を討つ逸話なのだが、この最後の逸話で、幸村の声がすでに木下秀雄に代わっていた。そしてこれらの逸話に佐助は不思議なくらい登場しない。何らかの理由で松山が早期交代し、幸村は木下になったが佐助の声の代わりの決定が遅れたのではないだろうか。

 三好清海は佐助を好きな夢影に片思いしていたのだが、二人とも声が河内桃子なので、清海と夢影の会話はなかなか大変だった。のち「プリンプリン物語」で、ボンボンの声の神谷明が、アクタ共和国の独裁者ルチ将軍の声もやっていて、二人で言い合う場面があり、オサゲ(はせさん治)が、「ちょっとちょっと、あんたらが言い合ってるとややこしい」と介入する楽屋落ちもあった。