『カムイ伝』に挫折した私

 田中優子の『カムイ伝講義』の書評をいくつか見た。褒めてあったのは言うまでもないが、活字での書評は信用できないのでアマゾンを見たらまだ誰も書いていなかった。
 私は2000年に田中と対談したが、その際田中は、これまでマンガは全然読んでこなかったので、有名なものを読んでいると言っていた。それが、『カムイ伝』に取り組み始めたと聞いて、ああやっぱりこの人は全共闘世代なのだな、と思った。
 私が学生の頃、小学館文庫で『カムイ伝』が復刊した。それで三巻まで読んで、あまりに面白くないので挫折した。のちに売ってしまった。
 四方田犬彦は『白土三平論』を書いているが、『サスケ』なら面白い。しかし『カムイ伝』はダメである。呉智英さんも、これを民俗学的薀蓄で語るのだが、やはり全共闘世代であることを免れていないと思う。
 まあ単純に、筋が面白くないから面白くない。その根源を尋ねると、徳川時代というものが面白くないのである。たとえばフランスの小説なら、フランス革命から、それ以後のいくつかの革命を舞台としたものがたくさんある。しかし徳川時代には、革命は起こっていない。なのに白土三平は、革命が起こるような世界を描こうとしている。しかし史実は変えられない。だから面白くないのだ。徳川時代そのものが、フィクションの題材として面白くないのである。現代日本も、徳川時代に似てきた。

                                                                                      • -

 自民党総裁選、のようなものがあると、脊髄反射のように「茶番」と言うバカがいる。もう30年間茶番茶番と言い続けているのだ。ところがそういう連中に限って、自分では何ら真の劇を起こすことなどできないのだ。

                                                                                      • -

 安馬いいねえ。久しぶりに小兵の渋い力士だ。改名するそうだが、せっかくの伊勢ヶ浜部屋力士なんだから、照国とか。もし来年優勝したら、伊勢ヶ浜部屋からは69年の清国以来40年ぶりということになる。
 それにひきかえ、二場所続けて千秋楽に千代大海の情けで勝ち越している琴欧洲の情けないこと−−。