朗読の意味

 自伝『あっちゃん』に、小学三年生の時に担任の女性教員が『春駒のうた』という児童文学を少しずつ朗読してくれて、生徒らが聞き入っていたが、私はあまり関心がなかったということを書いたが、私も小学校へ入る前は母の読み聞かせを聞いたりしていたが、それからあとは、何でわざわざ他人の朗読なんか聞かにゃならんのかと思っている。自分で読んだほうが早いではないか。

 私が若い頃「新潮カセットブック」とかいうので、日本近代の有名文学作品を有名俳優が朗読するみたいのが出て、私も興味本位で何か買ったが、すぐ飽きて売ってしまい、以後はそういう類は聴いたこともないが、世間にはオーディブルとかいってそういうのを聴く人がいるようだ。何か頭を使わない手仕事をしながら聴くというのはかろうじて理解できるが、とにかくコスパが悪くて時間がかかるから、自分で読むほうがずっといい。まあ、目が弱った人にはいいのかとも思うが、そうでない人の場合、あまり理解できない。

小谷野敦