2006-01-01から1年間の記事一覧

松浦寿輝を追撃

中村文則は二十代だし、ものごとがよく分かっていないのだろう。井口時男はどうもそんな悪辣な気がしない。いちばんたちが悪いのが松浦寿輝である。 かつて『批評空間』の公開シンポジウムで、東浩紀が自著への松浦の書評に激怒して憤懣をぶちまけ、柄谷が「…

ヨコタ村上孝之は、私の先輩に当たる。同僚でもあった。しかし今では、絶縁状態であり、犬猿の仲である。その理由を説明しよう。 ヨコタ村上孝之は、もと村上孝之だった。年齢は私より三つ上、大学院で五つ先輩で、つまり私が入学した時は、博士課程の五年目…

「悲望」批評総括

文藝雑誌は毎月七日発売である、などということは多くの人は知らないだろう。『文学界』と『群像』に「悲望」評が出たので、所感(弁明?)を述べておきたい。それにしても、雑誌に何かが載っただけでいろいろ評してもらえるというのは、小説家というのはず…

大小

四代目鶴屋南北の「大南北」は、孫の五代目南北を「孫太郎南北」というのに対するもので、「おおなんぼく」と読むようだ。 明治大正期の市村座の座主で、遂に松竹に併呑された田村成義は「大田村」と呼ばれたが、これは息子の寿二郎が「小田村」だったから。…

加藤典洋よ、お前は既に死んでいる

前に『文学界』に連載していた「文壇から遠く離れて」は、『反=文藝評論』(新曜社、二○○三)に収められているのだが、その中の「虚構は『事実』に勝てるか」という章の最後で、私は「想像力」という語の安易な用い方を反省すべきではないかと書いておいた…

『谷崎潤一郎伝』正誤表

谷崎伝はその後、『週刊文春』で日和聡子氏、「読売新聞」で野崎歓氏、『週刊ポスト』で縄田一男氏に書評していただきました。おん礼申し上げます。 やはりいくつか間違いがありましたので、今まで分かっている範囲でお知らせします。今度増刷があったら直し…

福田和也氏への感謝

昨日発売の「週刊新潮」で、福田和也氏が私の『谷崎潤一郎伝』をとりあげ、見開き二ページで絶賛してくれている。小谷野は「文壇では毀誉褒貶がありますが--私の云うことではないですね--アカデミズムに基盤をおく著者としては、抜きんでた力をもっているこ…

身内は呼び捨て

もう昔のテープで、円生と八代目正蔵(彦六)がリレーで「累ケ淵」をやったのがある。円生のあとを受けた正蔵は「ただいま円生が申し上げましたとおり」と言ったが、何も円生が年下だから呼び捨てにしたのではなく、お客さまに対しては身内だから呼び捨てに…

「三丁目の夕日」のダメさ

昨日、評判の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」をビデオで観て、あまりのひどさに怒りさえ覚えた。単に昭和33年の東京の町並みを再現しただけで、シナリオはチープで傷だらけだし、あの時代特有の臭いや貧しさというものがまるで伝わってこない。だいたい小日向文…

西尾幹二への疑問

八木秀次と西尾幹二が骨肉の争いをしている。今月の「諸君!」で西尾が八木を非難しているが、そこで、八木には天皇崇敬の念が足りない、新しい歴史教科書をつくる会の会長にふさわしいとは思えないと書いている。かくして遂に西尾は、「自由主義史観」なる…

不良ぶりを競う知識人

『ユリイカ』の西原理恵子特集の真ん中辺にある大月隆寛と西原の対談で、1993年に大月が「BSブックレビュー」で西原の『怒涛の虫』をあげたことを編集部が指摘して導入とし、大月が例のごとく「記憶にねえんだよなあ。あの番組、思いっきり偏向しやがてて…

迷走する谷沢永一

私がエッセイを連載している角川春樹事務所の雑誌『ランティエ』八月号に、映画・本・音楽の各ジャンルお勧め企画があった。巽孝之がいたのには、概して保守雑誌とみられるだけに意外だった。さて、谷沢永一が、飛ケ谷美穂子の『漱石の源泉』をあげている。…

訂正

拙著『なぜ悪人を殺してはいけないのか』で佐木隆三氏を死刑廃止論者と書きましたが、今では転向なさったようです。お詫びして訂正します。次の版が出たら注記します。 また「今上天皇」については、天保8年の『雲上明覧』に使用例があり、必ずしも近代にな…

『別冊宝島 これが最後のタバコ大論争』というのが今日出たようである。私はアンケートへの回答を求められて答えた。全部で15の問いがあったが、概して簡単に答えた。その13は、「あまりにも激しく禁煙を要求する人をどう思いますか?」だったので「死ん…

禁煙指導は吸う人の身になって 厚労省、映像で指導例 2006年06月10日 朝日新聞 たばこを吸う人の身になって、禁煙の一方的な押しつけはダメ――。禁煙指導をする保健師、栄養士らのために、厚生労働省が実践的な「禁煙支援マニュアル」(CD―ROM付き)を作…

芸術選奨はおかしい

いま盗作画家の受賞取り消しで話題の芸術選奨だが、誰もが、美術に詳しい人が選考しているのになぜこんな明々白々たる盗作を知らなかったのだろうと疑問に思っているだろう。私は、この賞は前々から変な賞だと思っていた。第一に、今回は珍しく美術部門の選…

吉原真里との議論(復活)

「都立大英文掲示板」というところで吉原真里の『聖母のいない国』への書評への反論を載せたら吉原から返事が来たのでさらに返事をした。しかし掲示板が消えてしまったようなので、ここに再掲する。(下から読んでね)■ 吉原さま / 小谷野敦 吉原真里さま お…

逃げたなはねこ

今日は東京地裁。井上はねこの訴訟で、はねこの答弁書がめちゃめちゃなのでラウンドテーブルで協議のはずが、はねこ現れず。 裁判長はもう一度呼び出してみると言っていたが、どうせまた無断欠席だろうよ。はねこは上野千鶴子の悪口を書いていたが、答えよう…

「昔は良かった」の迷信

秋田の北のほうのヤンキーあがりママの殺人事件で、昔はこんなふうにワイドショーやマスコミが騒ぎ立てたりしなかった、などと言っているバカがいる。 冗談ではない。マスコミが未発達だった徳川時代でさえ、人々はゴシップには飛びついた。いわんや明治から…

新幹線・在来線特急を全面禁煙に…JR東、来春から(読売新聞) JR東日本は6日、来春から新幹線や在来線特急の全車両を禁煙にすると発表した。 同社はこれまで、全面禁煙は長野新幹線など乗車時間が2時間以内の路線に限定していたが、分煙としていた他の路…

猫猫先生の想定問答

ネットバカ(以下NB):これに答えていないでしょう。これはスルーですか? 猫猫先生:「スルー」というのは何語ですか? もしかしてthrew,投げるという意味でしょうか。過去形ですが。 NB: 違う、throughだ、知らないのか。 猫猫先生:それは前置詞でし…

六月五日頃に出そうかと思っていたのだが、せっかくの世界禁煙デーなので、本日東京高裁へ控訴状を提出してきた。 なかなかひどい判決であった。その真意は計りかねるが。 なお裁判官は石川重弘。 被告指定代理人は、田上智子、齊藤みち代、木付正浩、中野滋…

清水冠者とマゾッホ

木曾義仲の嫡男で頼朝のもとへ人質として出され、大姫の許婚になったが、木曾討伐の後討たれた清水冠者は、義高とか義重とかさまざまに呼ばれているが、『平家物語』の、日本古典文学大系、日本古典文学全集には、「『尊卑文脈』によれば今井兼平の娘」など…

被害妄想

http://www.geocities.jp/jsajosei/redume/redume2.html 女性研究者の会か何かのものらしいが、以下のような文章があった。 そういえば、長谷川真理子さんとお会いしたとき、長谷川さんが早稲田の政経学部に所属しておられることをしりました。女性はあれく…

自慢する中島義道

『新潮45』に中島義道がまた「武勇談」を書いている。留学生たちと一緒に浅草のレストランへ行ったら、近くの二組のカップルがやたらうるさく、猥褻物さえ見せびらかしたのでウェイターに注意させ、遂に自ら出向いて「静かにしなさい!」と言ったら「なにお…

孝明天皇毒殺説について

私の最新刊『なぜ悪人を殺してはいけないのか』に、孝明天皇は岩倉具視に毒殺された、と書いてある。しかし読者から、その説は既に否定されていると指摘を受け、原口清「孝明天皇は毒殺されたのか」(藤原彰他編『日本近代史の虚像と実像 1』大月書店、1990…

最高齢

ドイツ文学者の国松孝二が99歳で死んだ。私が把握している最高齢学者であったが、その後、片岡美智というフランス文学者がそれより高齢で生きていることが分かった。 創作のほうの文学者最高齢は99歳の石井桃子。政治家の最高齢は今年98歳の宮本顕治か。十二…

井上はねこを提訴

2月23日、東京地裁に井上はねこを提訴した。インターネット上の名誉毀損の削除、謝罪文掲載、賠償金300万円支払いを命じる訴訟である。今日ようやく第一回公判だった。はねこは答弁書だけ出して欠席。こんなに時間がかかったのは、送達場所が分からなかった…

二年前から東大教養学部が全面禁煙になってしまったので、非常勤講師室に喫煙室を作るよう総合文化研究科長・学部長に要請してきたが、おそらく他にも要望があったのだろう、四月から「喫煙室」が作られた。ところが、まるで独房である。建物の入り口のとこ…

本日、第二回公判。次回、結審である。 当方の準備書面は以下のとおり。 平成18年(ワ)第674号 損害賠償請求事件 原告 小谷野 敦 被告 国 第1準備書面 平成18年4月19日 東京地方裁判所民事第6部B係 御中 原告 小谷野 敦 1、訴状の訂正 被告準…