井上はねこを提訴

 2月23日、東京地裁井上はねこを提訴した。インターネット上の名誉毀損の削除、謝罪文掲載、賠償金300万円支払いを命じる訴訟である。今日ようやく第一回公判だった。はねこは答弁書だけ出して欠席。こんなに時間がかかったのは、送達場所が分からなかったからである。

http://www.h3.dion.ne.jp/~haneko-i/genkou/rokaku.html
 このホームページには「アミ編集者学校」の住所が二箇所記載されているが、いずれも現在は存在せず、訴状は戻ってきた。さらに朝日新聞人物情報データベースにも載っている連絡先は、生涯学習センターのロッカーであるため送達不可。またはねこが評議員を務める財団法人とよなか男女共同参画推進センターすてっぷに送るも、受け取り拒否。はねこは関西大学総合情報学部・黒上晴夫ゼミの学生だが、就学先には送達不可。やむなくいつも留守電になっている唯一の電話番号から住所を割り出した。

 その間はねこは気楽な日記を執筆中。

http://blog.livedoor.jp/usagiyablog/archives/50666234.html
 某日の日記に概略以下のような書き込みをしたらたちまち削除されていた。
井上はねこ
 メールアドレスも入っているのに「自称」だの「本人かどうかは判別できない」だのとずいぶん白々しいですね。とよなか男女共同参画推進センターは受け取り拒否しました。逮捕されて有罪になった人だけあって、民事訴訟程度では驚かないのでしょうね」
 「朝日新聞」1999年5月16日大阪版朝刊によると、はねこは、

「井上は福岡県出身で元京大職員。臨時職員の待遇改善を求めた七四年の団交の時、「暴力行為」の疑いで逮捕された。
 井上の旧姓は珍しい名字だった。「家名に泥を塗った」と母親に泣かれた。ならばと一緒に逮捕された男性と結婚、井上姓に変えた。男の活動家たちは、「井上君の意見は聞くが井上さんの意見は聞かない」。そんな雰囲気だった。会合で酒やつまみを用意するのは女の役だった。
 「不当逮捕だ」と高裁まで争ったが負け、失職。その後はスナックのアルバイトなどで生計を立てた。
 八六年にウーマンリブの活動をまとめて自費出版。翌年、出版社に売り込み、その会社の書籍編集者になった。二年後に独立、編集者育成講座を始めた。」

 これまで、私のメールに答えたことは一度もない。 

 公判期日の前日になって、むやみと長い答弁書がファックスで届いた。裁判所にファックスしたらしい。次回期日には出席するそうだ。あまりに奇妙な答弁書であった。訴状が戻ってきたあと、私が裁判所書記官の指示によって住所を調べるべくあちこちに尋ねたのを「つきまとい行為」だと言い、上記の書き込みを「名誉毀損」だと言っているが、7年前に当人取材の結果として新聞記事として出た事実の摘示がどうして名誉毀損になるのか。しかも私が証拠として送ったビデオテープを、再生装置がないからと言って観ていないという。大学生なんだから大学の施設でVHSビデオくらい観られるだろう。     

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提訴とは関係ないのだが、はねこのブログに「トゼンナテイ」という項目がある。「徒然」のことだろうと思っていたが、以下を見ると、どうやらはねこはこれをポルトガル語だと思っているらしい。
 http://blog.livedoor.jp/usagiyablog/archives/50077333.html

 なぜ辞書が「日葡辞書」を参考にするかというと、当時の日本に口語を収録する辞書がなかったからであり、「日葡辞書」を見ると読み方が分かるからである。別に「とぜん」がポルトガル語なわけではない。         (小谷野敦