村上元三「五彩の図絵」

1973年6月14日から、74年9月14日まで、「朝日新聞」夕刊に連載された時代小説。中公文庫で上下二冊。背表紙の解説を書き写すと、

「元禄十五年十二月、赤穂浪士の討入りが、上杉家の若武者、春日今之助の運命を変えた・・・・・・。公儀に隠した城の修築、禁裡修復にまつわる黒い霧など、絵図作製の特殊技術を持つ今之助をめぐって起こる権謀術数のかずかず、泰平の世の裏面にひそむ人間諸相を雄大な構想でとらえる」。

下巻は「爛熟した元禄時代の影の世界で暗躍する若き米沢藩士春日今之助と、悪に徹した玄武道印。絵図をたてに、公儀に隠した城の修築をあばき、御所修復の裏を探って、巨万の富を掌中のものにしようとする・・・・・・。享楽の世相を背景に、うごめく人間群像をとらえて生き生きと描く」。

 下巻の解説は杉本苑子が書いていて、自分には手が出ない「大日本史料」を村上は揃えており、ほかにも徳川時代の史料類が豊富に手元にあると嘆息するように書いている。そういえば宮尾登美子原作の大河ドラマ義経」に、史料提供:村上元三とあった。遠近道印(おちこちどういん)という実在の絵図師もちょっと出てくるらしい(読んではいない)。