芸術選奨はおかしい

 いま盗作画家の受賞取り消しで話題の芸術選奨だが、誰もが、美術に詳しい人が選考しているのになぜこんな明々白々たる盗作を知らなかったのだろうと疑問に思っているだろう。私は、この賞は前々から変な賞だと思っていた。第一に、今回は珍しく美術部門の選考審査員三人の名が明らかになったが、選考審査員の名が分からない。前に文化庁のホームページで探したが、どこにも出ていない。だいたい賞といえば、新潮社の賞なら新潮社の雑誌に、といった具合に、選考委員名を明らかにするものだ。文部科学省文化庁でも『文化庁月報』というのがあるが、ふしぎなことに、文化功労者を選ぶ「文化審議会」の委員名はきっちり出ているのに、芸術選奨選考委員については、ない。
 第二に、1980年頃からのことだが、もう50を超えているような人に「新人賞」を出している。それだけなら、やはり新人賞というたてまえの直木賞でもあることだ。だが、80年の清水邦夫(44)、81年の坂上弘(45)、82年の前登志夫(56,ただし辞退)、84年の入船亭扇橋(53)、86年の岩橋邦枝(52)など、十分キャリアもある人に平然と新人賞を与えている。92年の大久保房男など71歳である。(というより扇橋のように下手な落語家が、これで権威にでもなったかのようなのが傍ら痛かった)
 しかもその受賞作に、首をかしげるようなものが、やはり80年以降、少なくない。土屋恵一郎の『元禄俳優伝』や田口章子の『江戸時代の歌舞伎役者』などは、別に何かが間違っているというわけではないが、賞をやるほどのものか? と思った。田中優子の『江戸百夢』など、文部科学大臣賞とサントリー学芸賞を受賞しているが、その価値はまったくない。全体として、作品や活動のよしあしというより、人脈で授賞されているという感じが強い。まあ賞なんてみんなそんなものかもしれないが、何しろ選評もないし、よけい胡乱さが際立つ。
 文科省文化庁が本気で反省しているなら、選考委員名の公表から始めるべきである。もっとも、選考委員は三年ごとに交代して公正を期している、と称していたが、その選考委員を選ぶ人は変わっていない、という疑念もある。
 まあ、国のやることだから、そんなものか。