2006-01-01から1年間の記事一覧

「洋画劇場」の謎

今では衛星放送やワウワウがあるからいろいろだが、私が学生のころは、民放各局がそれぞれ別の曜日に映画番組を放送するのが、主たるテレビでの映画放送だった。NHKは、勤労感謝の日の朝、労働者を描く映画を放送していて、それはそれでよそではなかなか…

高校時代のいじめ

いじめが原因で自殺した小学生のニュースが続いている。私の高校時代もひどいものだった。といっても暴力はなかったが、陰険陰湿、かつ加担する教師もいた。私が行ったのは海城高校だが、今と違って、進学校ながら東大進学者は年に五、六人だった。だから滑…

遺族の手記

奈良の女児誘拐殺害犯が控訴を自らとりさげて死刑が確定し、幼女の両親の手記が公表された。どうも最近、この手の「手記」がはやっているようだが、よろしくない。今回は「反省して苦しんで欲しい」云々とあるが、「早く死刑になってくれ」とか「殺してもあ…

大鉄人17とメビウス

「大鉄人17」のDVD第一巻を買ってこないだからちびちび観ているが、いいねえ。私は最初の放送時は中学生で、特撮を「卒業」していたから見ていないが、大学生のころ『アニメック』のダイコン・プロの紹介文を読んで以来、観たい観たいと思っていた。 何…

最長老

柳家小せんが死んで、落語界最高齢は桂米朝と米丸の二人。81歳。 ところで落語協会新会長の鈴々舎馬風には二冊の著書があるが、一冊目は『トルコへ10倍楽しく通う方法』(1983)である。

勝手に決めるなネットマナー

さる女国文学者が、アマゾンである本のレビューを書いた。さして厳しいレビューではなかったが、「学者は偉い」といわんばかりの文章だったので、著者はウィッシュリストからその実名をつきとめ、ブログに書いた。するとほどなくその女学者から出版社経由で…

書籍というもの

一般に、文章にせよマンガにせよ、書き下ろしでなければ、雑誌に載り、ついで単行本に入るという流れになっていて、あとで参照しようと思えば単行本を見る、というのが普通である。しかし、最近気づいたのは、評論文の単発のもので、メジャーな雑誌に載った…

名画礼賛と・・・

先日、いい映画を観た。Vシネマの『F.ヘルス嬢日記』という、加藤彰監督、荒井晴彦脚本、一九九六年のものだが、これを観たのは、佐伯一麦の短編「一輪」が原作だと知ったからだが、驚くべきことに、原作を凌駕するほどの名画だった。劇場映画ではないか…

王柯『多民族国家中国』の漢民族帝国主義

現在神戸大学教授の王柯は、東京大学で博士号をとり、その学位論文を一九九五年、『東トルキスタン共和国研究』(東京大学出版会)として刊行し、翌年のサントリー学芸賞を受賞している。主に一九四六年以前のウイグル独立運動を扱い、その背後にソ連があっ…

「片落ち」はあるというのに

『諸君!』11月号で佐々淳行が放送等禁止用語を論じていて、「片落ち」を「片手落ち」の代わりに使った、といって「片落ち」などという日本語はないと書いていた。もう、「片落ち」は徳川時代からあると言っているのに!(初出は中世後期) 私のエッセイ集を…

武藤康史の「理由」

今度阿木耀子監督で映画化されるという俵万智の小説「トリアングル」が新聞に連載されていたころ、武藤康史がこれを絶賛する文章を文芸雑誌に書いた。毎日切り取ってノートに貼っているという。「トリアングル」は、所詮俵も小説では素人と思わせたもので、…

渋×知×事件顛末

その女から手紙が来たのは、一九九九年の五月末か六月はじめだったと思う。当時私は、三月に大阪大学を退職して東京に引っ越していたが、著書『もてない男』が売れていたため、東京へ帰るととたんに次々と、本を書いてくれという編集者が会いに来たり、テレ…

1999年に、阪大を辞めた顛末は、簡単に「新潮45」に書いたが、もっと詳細な手記がある。これも、活字にしてもらえないものである。(イニシャルでも)よってここに掲載することにする。 大学教師が、よその大学へ「移る」のではなくて辞職するというのは、…

書店での発見

駒場の書籍部へ行った。本当は図書館へ行くつもりだったのだが、閉館であった。確認を怠った。するといろいろ見つけた。高木博志の著作も出ていた。 不意の発見は水野尚『恋愛の誕生』である。恋愛は12世紀南フランスに生まれたなんて、二十年前の遺物に過…

引用された・・・

中公新書の佐藤八寿子『ミッション・スクール』というのが、著者謹呈で送られてきた。別に知らない人である。私より三つ年上の社会学者で、これが最初の単著らしい。私の本が参考文献にあがっているのかな、と思って見て行ったら、がーん。「小谷野敦 猫を償…

童貞なのはお前だけじゃない

http://freekoi.blog34.fc2.com/blog-entry-74.html 私が『もてない男』を出したとき、『週刊文春』で井上章一さんが「今どき30歳で童貞なんて、トキみたいなもの」と発言、私は井上さんに「抗議」し、「四ケタはいると思う」と反論したが、統計に詳しい人の…

座談会からの失踪

『ダ・カーポ』を立ち読みしたら、吾妻ひでおにあやかって「失踪」を特集していた。なかで辛酸なめ子が、パーティからの失踪を語っていた。私もパーティからはよく失踪する。特に小人数の場合、悪酔いした奴が出てくると逃げ出すことにしている。 しかし、座…

テレヴィジョンは不滅か

「今、検索されている言葉」を見ると、上位はたいていテレビ番組関係である。かつて映画が登場して演劇や見世物の地位を脅かし、テレビが登場して映画を斜陽産業と呼ばしめた。しかしどうも、インターネットは、新聞は脅かしているが、テレビは脅かしていな…

山下悦子の思想と個人崇拝

東京裁判のとき「あなたと東条の間に思想的対立があったそうだが」と尋ねられた石原莞爾が、「東条には思想などというものはない。ないから対立するはずがない」と答えたのは有名な話だが、山下悦子にも思想などというものはない。今の若い人は、十五年くら…

祝! 男児ご誕生

・・・とでかでかと表紙に記してある『週刊朝日』を外国人に示して、これは左翼・フェミニズム系とされる新聞社が出している雑誌だと言ったらたまげられるだろうなあ。オペレッタ(サヴォイ・オペラ)「ミカド」でバカにされるだけの理由はあるよ、日本人は。 -…

増加する戦後民主主義者

糸圭秀実は、井上ひさしを「戦後民主主義者」と呼んだ。天皇を認め、憲法第九条を守れと主張するのがその謂である。私は、井上がかつて激しい反天皇論者だったとして糸圭に反論したが、井上が文化功労者となって天皇の茶会に出たとき、井上は私と、井上を信…

「エマ」はひどい、その他

最初はジェイン・オースティンの原作かと思っていたが、なんか評判なので読んでみたマンガ「エマ」はひどい。あれが当時の英国の階級意識を正確に描いていると思われるようでは困る。「身分違いの恋」という設定にはなっているが、あんな生易しいものでないこ…

種は尽きまじ

恐らくこれからも、次々と新手のバカが現れて、遊女は聖なるものだったとか言い続けるのだろう。『別冊歴史読本 歴史の中の遊女・被差別民』を見つけてそう思った。今のところ、私に批判されているのを知っているのか知らないのか、たぶん知らないのだろうほ…

『谷崎潤一郎伝』訂正その2

(ウェブサイトへ移動) なお河野多恵子『谷崎文学と肯定の欲望』には、谷崎が丁未子を作家にしようとして荷風に頼み、『クオ・ヴァディス』を読むよう言われたとの記述がありますが、隅野滋子からの伝聞と思われ、谷崎と荷風の関係からいって考えにくく、荷…

そういえば、2002年暮れ、嫌だと言ったのに謀略に引っかかってヨコタ村上孝之と同席させられたシンポジウムで、髪の前の部分を赤く染めた村上は文化相対主義を主張し、(活字化のため削除)どうやらヨコタ村上には、犬を食べるというのはFGMと同じくらい…

書店の便意

土屋賢二のエッセイは、おもしろくない。もう十年くらい前に、おもしろいと評判を聞いて文庫版を買ったらおもしろくないのですぐに売った。当人はいかにも笑えるつもりで書いているようなのだが、全然おかしくないのである。 もっとも、若くてあまりものを知…

書評暗黒話

まだ大阪にいた、確か1998年のことである。広島に本拠地のあるさる地方新聞から書評を頼まれた。ところがその本が、その地方新聞に連載されたものを纏めたもので、しかもその書いたご当人からの依頼だったので、私もさすがに変だなあ、とは思ったものの、ま…

城山三郎先生が変

作家・城山三郎が、角川書店のPR誌『本の旅人』に見開きの随筆を連載している。が、このところ様子がおかしい。ある回では、夕飯をとるべく電車に乗って隣の駅へ行ったら、駅を降りるとあたりは閑散としており様子が変で、帰りの電車もなくタクシーで家ま…

どちらが封印されているか

大江健三郎の「セヴンティーン第二部 政治少年死す」は、『文学界』掲載当時、右翼の脅迫があったため単行本にも収録されていない幻の作品とされている。しかし今では鹿砦社の『スキャンダル大戦争2』に入っている。それ以前でも、大学図書館で『文学界』の…

井口時男を邀撃

井口時男、1953年2月3日、新潟生まれ。東北大学文学部卒。 1983年、中上健次論で群像新人賞受賞。 1987年7月、最初の著作『物語論/破局論』を論創社から上梓。なお5月には東工大教授・川嶋至が論創社から『文学の虚実』を上梓している。 1990年4月、東…