石川淳「諸国畸人伝 改版」 (中公文庫)レビュー

別冊文藝春秋」に1955年から56年まで連載された、十人の近世から近代にかけての工芸職人などの伝記集。大江健三郎が初めて石川淳に会った時この本をくれたというが、その後大江と石川の関係はやや曖昧模糊としている。  人は都々逸坊扇歌、鈴木牧之、小林如泥らだが、私は石川淳の小説が面白くなくて閉口していたし、これは若い頃読もうとして、何かイライラしていたのかすぐ放り出したが、今読むと割合面白かったが、鈴木牧之のところで、馬琴の悪口を言うので、まあやっぱりこの人とは合わないなと思った。どうせ石川淳は馬琴が嫌いなんだろうと思っていたからだ。あとは石川淳を好きな人が嫌いだということがある(田中優子とか鈴木貞美とか)。しかし石川淳の本としては面白いほうだが、最後から二番目の武田石翁のところだけかなりつまらなかった。あと改版の時にできたらしい誤植が三カ所あった。

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