「エマ」はひどい、その他

 最初はジェイン・オースティンの原作かと思っていたが、なんか評判なので読んでみたマンガ「エマ」はひどい。あれが当時の英国の階級意識を正確に描いていると思われるようでは困る。「身分違いの恋」という設定にはなっているが、あんな生易しいものでないことは、フォースターの「ハワーズ・エンド」を読んだって分かる。だいたい「二つの階級がある」などと父親が言っているが、実際には上流、アッパーミドル、ロウワーミドル、下流と最低四つには分かれるのだ。だいたい当時の英国の中流の男が、メイドを「かわいい」と思う意識自体、存在しない。しょせんは「シンデレラ」並みの夢物語である。ああいうマンガを本気にしている人は、新井潤美『階級にとりつかれた人びと』(中公新書)、『不機嫌なメリー・ポピンズ』(平凡社新書)を読んで勉強するように。むしろ志賀直哉の「濁った頭」あたりが、ちょうど、中流の青年と下女との恋愛(まがい)の実相を描いている。

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 山口県周南市徳山工業高等専門学校で同校5年の中谷歩さん(20)が殺害された事件で、県警周南署捜査本部が殺人容疑で逮捕状を取った同級生の男子学生(19)の実名と顔写真が、7日発売の「週刊新潮」(新潮社)に掲載されることが6日、分かった。
 同誌は、「徳山高専殺人『19歳容疑者』の隠された『実名と顔写真』」と題する記事で掲載。記事中で「凶悪事件において、犯人の身柄確保以上に優先すべきことがあるはずがない。そのための実名と顔写真の公表は、犯人の『自殺・再犯』の抑止にもつながる」などとしている。 

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再犯抑止はいいが、自殺したらありがたいのではないか。今の日本では一人殺したくらいじゃ十年以内で出てくるんだから、死んでくれたほうが社会のためだよ。(死んでた。めでたしめでたし。殺された女子にはめでたくないが、ああいう凶悪犯罪者がこの世から消えたことはめでたい)

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その後新聞は「最悪の結果」だの「これで真相は謎」とか書いているが、真相なぞ、強姦殺人に決まっておるではないか。「最悪の結果」というのは、そいつが十年内外でムショから出てくることのほうだよ。
 あと週刊誌が実名報道したことについて「犯人にも家族があるし」とか書いていたマスコミがあったが、あほか。犯人が未成年でなくたって、家族はあるだろうが。未成年の犯罪者の家族のプライバシーは守る必要があって、成年なら必要がないのか? まったく、新聞記者は痴呆の職業だね。