座談会からの失踪

 『ダ・カーポ』を立ち読みしたら、吾妻ひでおにあやかって「失踪」を特集していた。なかで辛酸なめ子が、パーティからの失踪を語っていた。私もパーティからはよく失踪する。特に小人数の場合、悪酔いした奴が出てくると逃げ出すことにしている。
 しかし、座談会から失踪したことがある。あれは2001年の秋だったか、『SPA!』で、「エロ」についての座談会に出てくれないかと言ってきた。出席者は、江川達也みうらじゅん北原みのり速水由紀子だという。当時私は売春反対論者で宮台と対立(一方的に)していたので、このメンバーでは、売春エンコーイケイケドンドンになるのではと危惧して、江原由美子千田有紀が出るなら私も出る、と返事をして、どうせ二人とも断るだろうと思っていたら、千田さんが承諾してしまったので、仕方なく出かけたのである。
 場所は西新宿のビルの一室。大きな机の、向かい側にみうら、左手に江川、北原、速水、私はこちら側で、みうらの右手が千田さんだった。ドア側に私が座ったのは、逃亡をある程度予感していたからか。千田さんは、1993年に私が上野ゼミにもぐりこんだ時、話したことがあるということだった。
 いや、えらい座談会であった。みうらと江川が怒涛のごとく喋りまくり、北原と速水はついていけているのだが、私と千田さんは呆然と聞いている。中身はエロ話とバカ話である。「児童買春ポルノ禁止法なんて、やめるべきだよな」などと江川が言う。江川とみうらは、買春する気になれないという男の心理が理解できず、「なんで、行きゃあいいじゃない。何が嫌なの?」などと言い、速水さんが説明する。やたらセックスセックスというので辟易して、千田さんと、「セックスばかりが生きる楽しみじゃないですよね」などと意気投合する。そのうちみうらと江川、酒も入っていないのに「ストーカーとか、名前がかっこよすぎるよな、××××野郎とか、××天狗とか言えばいいんだ」などと言い出し、北原が「天狗はかっこよすぎる」などと返す始末で、こいつら中学生か、と呆れつつ、私はカバンを確認し、失踪の準備をした。その話で千田さん以外が盛り上がるのを尻目に、スタッフに「もう遅いので」と小声で言うと、さっと逃げたのである。帰ってから「あの座談会にはいなかったことにしてください」とファックスを入れた。だからあの座談会に私はいなかったことになっているのである。
 しかし千田さんは、声もかわいいし、チャーミングな人だと思ったが、いかんせん書くものが良くない。

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http://blog.tatsuru.com/archives/001003.php
なんてまあカタカナの多い文章なんだろうね。増田聡風情に「ご令室」ときた。偉くなったもんだな増田。飯田祐子なんて八年間単著出してねえじゃねえか。まあ自分の若い知己をもって「未来は彼らのものだ」と言うということは、現在は自分のものだと思っているのだろうか内田ジュは。