書籍というもの

 一般に、文章にせよマンガにせよ、書き下ろしでなければ、雑誌に載り、ついで単行本に入るという流れになっていて、あとで参照しようと思えば単行本を見る、というのが普通である。しかし、最近気づいたのは、評論文の単発のもので、メジャーな雑誌に載ったもので、著者がそれほどメジャーではない場合、単行本を探すより雑誌を探すほうが早い場合があるということだ。なかんずく、国会図書館雑誌記事索引が次第に充実していくにつれ、そちらを申し込んだほうが早いという状況になってきた。特に、雑誌記事がどの単行本に入っているか、簡単には分からないこともある。

 話は違うが、書評というものは、新刊書についてするのが普通だ。だいたい三ヶ月以内とされている。そういう縛りがなくても、書籍紹介の記事などは、なるべく品切れ、絶版でないものを、と言われることが多い。最近は本が品切れ、絶版になるのが早いので、いい本なのに紹介しにくい、ということが起こる。だが、アマゾンのマーケットプレイスやインターネット古書店などで、五、六冊出ているものなら、生きていると見なしてもいいのではないか。まあ、私が名著だといって紹介したとたんに売り切れる、というようなことがあればよいが、それはないし。逆にいえば、五木寛之とか齋藤孝とかが、既に品切れ絶版の名著を紹介してくれれば、復刊の気運も盛り上がろうというものだ。社会的影響力のある文化人は、そういう本の紹介にも力を入れてもらいたい。                     (小谷野敦