「洋画劇場」の謎

 今では衛星放送やワウワウがあるからいろいろだが、私が学生のころは、民放各局がそれぞれ別の曜日に映画番組を放送するのが、主たるテレビでの映画放送だった。NHKは、勤労感謝の日の朝、労働者を描く映画を放送していて、それはそれでよそではなかなか観られないものも観られて良かったのだが、いつしかなくなった。
 私の学生時代は、
 水曜 水曜ロードショー TBS(解説・荻昌弘
 木曜 木曜洋画劇場 テレビ東京
 金曜 金曜ロードショー 日本テレビ(解説・水野晴郎
 土曜 ゴールデン洋画劇場(解説・高島忠夫
 日曜 日曜洋画劇場(解説・淀川長治

 という陣営だった。テレビ東京は、最初解説は河野基比古、その後木村奈保子に変わった。荻は私が大学を出る頃には死んでいた。今どうなっているかは、どうせ調べればすぐ分かることなので書かない。
 当時はまだレンタルビデオも発達していなかったから、これらの番組は今よりずっと重要だった。荻や河野はそれぞれにキザだった。木村奈保子は、美人なのに妙に目が怖かった。水野は、『チャイナ・シンドローム』を放送した時に、これは決して原発は危険だという映画ではなく、サスペンスです、などと妙に不自然な解説をしていて、ははあまた選挙に出るつもりだなと思わせた。
ほかに深夜の映画番組では、まだ若かった飯干恵子や岡部まりが解説をしていたことがあって、かわいかった。飯干は「飯干晃一の娘か」などと思っていたら本当にそうだった。岡部まりは、「探偵!ナイトスクープ」が始まる前だった。私が「探偵」を知ったのは、1992年、京都の友人たちのところへ遊びに行った時のことだった。
 それはそうと、なんで二つも「洋画劇場」なのか。邦画は「特別企画」などとして放送していたが、これらの番組が作られた当時、いかに邦画がバカにされており、洋画こそ面白く観る価値があると思われていたかが窺える。私は割合早い時期から、そんなことはないと思っていた。市川崑の『幸福』という映画にいたく感動した覚えがあって、また観たいのだが、ビデオもDVDもない。