宮木あや子の『校閲ガール』がやたら面白かった。もっとも最初の『花宵道中』は私の嫌いなおいらんものだからダメ。
ヒロインがキュートで、私の知らないブランドや食べ物の名前がバンバン出てくる。そういうものとの距離の取り方がまた絶妙だし、文章が異様にうまい。よほど知的な人である。
ヒロインは聖妻女子大卒だが、藤岩という東大卒の女性編集者が出てくる。この人が最後に、学生時代からつきあっている院生の彼氏が「二、三年後には准教授になるし、来年あたり結婚する」と言うのだが、これがやや意味不明だ。二、三年後には准教授というのは、今は専任講師なのか? だとしたら准教授になろうがなるまいがあまり関係ないし、それとも大学院を終えて、「二、三年後に准教授としてどこかへ着任する」のが分かっていると思っているのか、ちと疑問であった。(続編の『校閲ガール ア・ラ・モード』ではこのカップルが詳しく描かれていて、彼氏は昭和の文藝批評家(平野謙?)を研究する文学研究者で、博士号をとっているが定職はなく塾講師をしており(非常勤もないのか?)「二、三年後は准教授」は盛った表現だったと藤岩は言っている)。しかし学者というのは、就職が決まっても、関西ならまだよし、岡山とか熊本とか北海道とかどこへ行くか分からない、それを断って首都圏でと言っているとなかなか決まらなかったりするのだがそれは分かっているのだろうか。
そのあと藤岩は、薩長ものの小説の監修(?)を頼んだ母校(東大)の加藤教授に会いに本郷へ行くのだが、赤門から入って安田講堂の裏のベンチで彼氏が女といるのに遭遇している。東大の日本史の教授に会うのに安田講堂の裏へ行く理由はないと思うが…。
それはそうと、裏表紙に描いてある老大家の作家の漫画が明らかに筒井康隆なのだが…。