「男たちの旅路」と「宇宙戦艦ヤマト」

「男たちの旅路」のスペシャル「戦場は遥かになりて」(1982年2月)は、ヤクザもんとの戦いで死んでしまった若い警備士の婚約者の妊娠している真行寺君枝を鶴田浩二が若者の郷里の小笠原まで連れて行って父(ハナ肇)と反戦思想を語りあうもので、「かっこよ…

わかりやすすぎるピカソ

ピカソの絵について「わからない」ということから書き始めている新書を見たが、ピカソの前衛的な絵は、むしろ分かりやすい。「あー、めちゃくちゃなように見えてこれで××を表現してるのね」ということがわりあい分かってしまう。 音楽でいえば、ストラヴンス…

「殺陣師段平(たてしだんぺい)」の謎

「殺陣師段平」といえば、私にはある種の伝説としてのみ存在した新国劇の狂言である。大正年間、澤田正二郎が旗揚げした新国劇の殺陣師だった大阪の市川段平は、市川右団次門下にあって中村鴈治郎(初代)とわたりあったというのが自慢である。1982年に市川…

音楽には物語がある(33)お富さん 「中央公論」2021年8月号

一九五四年といえば昭和二十九年、「君の名は」と「ゴジラ」の年である。前年、テレビ放送は始まっていたが、一般家庭に普及するのはまだまだで、ラジオ放送で北村寿夫作の「新諸国物語」の一つ「笛吹童子」がヒットし、貸本マンガはその黎明期だった。子供…

「勝手にしやがれ」の思い出

1987年の10月1日、私は比較文学の院生一年目だったが、有楽町スバル座でゴダールの「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」二本立てをやっていたから観に行ったら、一年生の時の同級生だった男Sに会った。Sは卒業して就職していたが、一人で来ていたから、お互…

腐った鯨と「ちりとてちん」

吉村昭の『北天の星』は、レザノフが長崎で日本との通商を断られたあと、自分はアメリカ大陸へ渡り、部下のフヴォストフとダヴィドフに、腹いせのため日本の北海を荒らすよう命じた際、択捉島でロシヤ人に連れ去られた中川五郎治を主人公にしている。のち五…

ある種の侮ってはいけなさ

私が阪大へ行ったのは94年4月だが、宮川先生という50歳になったばかりの少し白髪の英語の先生がいた。阪大出身の英文学者であった。9月に、博士論文として提出する予定の『自然と詩心の運動 : ワーズワスとディラン・トマス』という著書をいただいた。何げな…

西洋彫刻と口なし

日本の巨大ヒーローは、アニメ・特撮を問わず口に、西洋彫刻型と口なし型があり、どちらとも違うウルトラマン型がある。西洋彫刻型というのは「勇者ライディーン」みたなもんだが、要するに人間の口をそのままデザインしたもので、最初は「ジャイアントロボ…

学問の流行

1997年5月に、小森陽一, 紅野謙介, 高橋修 編『 メディア・表象・イデオロギー : 明治三十年代の文化研究 』(小沢書店)という日本近代文学の論文集が出て、話題になったことがある。ところが、なんで話題になったのか、内容が斬新だとか、優れた論文がある…

ウルトラマンとマグマ大使

ウルトラマンの成立については、はじめベムラーという、日活のガッパみたいな造形の、人間の味方をする怪獣を考え、それからレッドマンというゴツゴツしたヒーローを考え、それからウルトラマンになったとされている。 しかし、ウルトラマンより早く放送が始…

間宮林蔵・探検家一代―海峡発見と北方民族 (中公新書ラクレ) 高橋大輔    アマゾンレビュー

そんなに変かね?星2つ 、2021/09/01間宮林蔵については私も一書を著しているのだがこの本の参考文献にはない。読んでいくと、例のシーボルト事件について、林蔵がシーボルトからの手紙を開封せず幕府に届けたことを、著者は「意外な行動」と言い、なぜそん…

乳母車・最後の女 石坂洋次郎傑作短編選 (講談社文芸文庫) アマゾンレビュー

軍人誣告罪などというものはない 星1つ 、2021/09/01 この一点は、作品よりも巻末年譜に対するものである。戦前の石坂が「若い人」で、不敬罪と軍人誣告罪で右翼から告訴されたと書いてあるが、私がくりかえし言って来たとおりこれは間違いで、右翼から出版…

文学とは何か――現代批評理論への招待(下) (岩波文庫) イーグルトン」アマゾンレビュー

イーグルトンはポストモダンを批判しているのだぞ星1つ 、2021/09/01この一点は、文庫版への訳者大橋洋一のあとがきに対するものである。大橋は、文学理論の正しさを言い、これを否定するものを保守派守旧派と罵っているが、中で「ジャック・ラカン、デリダ…

シャルル・ドゴール空港

2018年1月にNHKで全四回で放送された「平成細雪」は、「細雪」の舞台を1990年代のバブル崩壊後の日本に移したもので、蓬莱竜太がシナリオを書いていた。あとで録画しておけば良かったと思ったのだが、その第一回で、雪子(伊藤歩)と見合いするイケメン男が…

古代と近代の架け橋 江戸のダイナミズム」西尾幹二・アマゾンレビュー

学識の豊かさが内容の正しさを意味しない一例星2つ 、2021/08/28「ですます」体で書かれているのが、読者に媚びる時代を示しているようだ。著者はドイツ文学、特にニーチェが専門だが、ニーチェに連なる古代ギリシャの文献学から、清朝考証学などあちこちの…

水村美苗「見合いか恋愛か」について

水村美苗の「見合いか恋愛か」という漱石『行人』論は、文学研究者の間でやたら人気が高く、最近もある著作の中で(藤森清『三四郎の駅弁』)唐突に出くわしたので改めて書いておくがあれは間違いである。 水村は『行人』の一郎が、見合いで結婚したのに妻に…

人の名前を笑いものにしてはいけない

『進撃の巨人』にオニャンコポンというアフリカ系の名前の人が出て来るが、私は最近ようつべで昔の「トリビアの泉」を観ているが、今ならありえないだろうというようなセクハラな行いも見られる。中で、ガーナのサッカー協会の会長の名前がニャホ・ニャホ・…

引っ越しの手伝い

吉永小百合のデビュー作「朝に吹く口笛」(1959)を観た。新聞配達員の話なのだが、「引っ越しがあるぞー」という声があがると、新聞販売所の若者たちがおしかけて手伝いをし、見返りに新聞をとってもらおうとする場面があり、ああこういう引っ越しの手伝い…

アンソーシャル ディスタンス」金原ひとみ・アマゾンレビュー

読むのがつらかった星1つ 、2021/08/25谷崎賞をとったので表題作だけ「新潮」で読んだが読むのがつらかった。幸希という大学まで出る男が高校中退でメンヘラで堕胎する女となんでつきあっているのか最後まで分からなかったし、ちょいちょいはさまれるコロナ…

女は残酷趣味?

「オール読物」で直木賞の選評を読んでいたら、「テスカトリポカ」の評価について選評で論争をしているような趣きがあった。中でもちょっと怖かったのは三浦しをんで、その残酷描写への批判に対する「反論は、『ジョジョの奇妙な冒険』の名言「お前は今まで…

「しかし」の使い方

「ウルトラマントリガー」は相変わらず面白くならないが、友達同士の会話に「しかし」などという硬い言葉が出て来ておやおやと思った。 早乙女愛が早乙女愛を演じた「愛と誠」三部作の映画の二作目だったか、冒頭で愛が両親と、太賀誠の処遇について話し合っ…

伊藤整「火の鳥」の謎

私が高校生の時使っていた国語便覧(京都書房)に、伊藤整が一ページを使って紹介されていた。 鴎外、漱石、藤村、芥川、谷崎、川端らが見開き二ページで、太宰、小林多喜二、中島敦が一ページだったから、ほう伊藤整ってそんな偉い作家なのかと思った。下に…

教養ということ

私は中学二年の夏休みに、三週間アメリカのミネソタ州へホームステイに行った。その前に、持っていくものを買うため家族四人で日本橋三越へ行った。父は会社の給料では足りないので補いのため三越からロレックスの修理の仕事をしており、母が使いとしてよく…

マドンナとサヴォイ・オペラ

「マドンナのスーザンを探して」という映画があったが観ていなかったのでツタヤで借りたら「スーザンを探して」というタイトルになっていた。ウィキペディアんでは、マドンナは主演じゃないし出番も少ないから題名を変えたみたいに書いてあったが、私はそれ…

音楽には物語がある(32)岩崎宏美と真珠湾 「中央公論」八月号

岩崎宏美は、結婚したあとも活動は続けたが、その頃出ていたCDには、「益田宏美(岩崎宏美)」と、夫の姓に変えた名前が記されていたりしてちょっと妙だったが、それも離婚して元に戻った。 実力の割に評価されなかった歌手だなあ、と思って、YouTube で当時…

教養読物の役割

私が小学生のころ、小学館の学習雑誌や学研の科学と学習を毎号とっていたが、それらには付録や本文内に、秀吉の伝記とかエジソンの伝記といった教養読物がついていて、当時は今より暇だからそういうのも読んでいたのが教養になっている。その後の世代はあま…

音楽には物語がある(32)シルクロードと岩崎宏美 「中央公論」7月号

日中交流史が専門の比較文学の後輩である榎本泰子が『「敦煌」と日本人』(中公選書)を出した。一九八〇年にNHKで放送が始まった「シルクロード」と、その後製作された映画「敦煌」を中心に、あの当時の日中文化交流を描いたものだ。 私の名前は、井上靖の…

アマゾンに掲載拒否されたレビュー

創作か 盗作か 「大東亜共栄圏」論をめぐって 原 朗 | 同時代社、2020★3 その時点で言うべき(概略)十五年戦争について共同で研究していた原朗(1943-)は、小林英夫(1939-)が1975年に「大東亜共栄圏の形成と崩壊」(お茶の水書房)を出した時、自分が学…

「宇宙戦艦ヤマト」に関するありがちな誤解

必要があって、常見陽平の「ちょいブスの時代」をいうのをざっと読んだ。単に芸能人にちょっとブスなのがいるというネタを膨らませただけだが、恋愛論史も入っていて、当然論及されてしかるべき「もてない男」が無視されていなければ、私も駄本とまでは言わ…

「本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝」

122p「スティーブンソンがタヒチ島に移住して」→「サモア諸島のウポル島に」 「中島敦はポナペ島へ」→「パラオ島へ」 (言い訳ではないのだが、私は南洋に対して興味がないので、間違えるのである)