2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

室井尚という人

室井尚といえば、横浜国大教授だった人で、同大に唐十郎を教授として招いたことで知られる。この人も「禁煙ファシズムと戦う」人で、『タバコ狩り』という本を出していて、これは送って来たが、タバコの害について科学的に否定しようとする本で、しかもその…

岡嶋二人と母

岡嶋二人という二人組の推理作家がいた。乱歩賞をとり、吉川英治新人賞もとったが、そのご解散して、片方だけが井上夢人の名で書いている。 私が大学院生だった1988年ころ、両親とテレビを観ていたら、岡嶋二人原作のドラマの予告が流れたことがある。すると…

関口鎮雄と坂本石創

田山花袋の晩年に、息子の先蔵と次女の千代子が恋愛関係の事件を起こしている。先蔵のほうは、早稲田の教授だった吉江孤雁の娘に恋慕して、吉江宅を訪ねて面会を強要し、警察に捕縛された事件が新聞に報道されている。小林一郎の『田山花袋研究 歴史小説時代…

小松美彦という人

小松美彦(よしひこ)といっても、世間では妖怪研究の小松和彦と間違われる程度に無名らしい。小松茂美の息子といったほうが通りがいいだろうか。倫理学者で今年まで二年だけ東大文学部教授だった。 禁煙ファシズム批判の人だったから細々とやりとりがあった…

「次郎物語」の結末

「次郎物語」は、近代の古典的小説の中でも特異な位置を占めている。作者・下村湖人は文壇の人ではないし、教師をしていて50過ぎてから「次郎物語」を書き始めている。私も若いころ、偕成社の児童向け日本文学で第一巻を読んだきりになっていたが、これは最…

「安曇野」の思い込み

臼井吉見の『安曇野』という長編小説がある。筑摩書房の『展望』に連載されたもので、全五巻、ちくま文庫版では一冊が450ページ以上ある大作である。谷崎潤一郎賞を受賞している。 臼井は長野県安曇野の出身で、筑摩書房の創業者・古田晁とともに上京してき…

親と子のすれ違い

私が若いころ、両親それぞれに、私の趣味に媚びるような買い物をすることがあって、父親が村上春樹ブックとか三島由紀夫の世界とか買って来たのは、私が村上春樹や三島由紀夫を嫌いなのを知らないでなので困ったことだったが、母親は、カナダ留学中に『批評…

それはNOSAKAだ

私が阪大に勤め出したのは1994年4月で、その年の秋から、当時帝塚山学院大学講師だった佐伯順子さんは研究員として米国ブルーミントンのインディアナ州立大学へ、スミエ・ジョーンズを受け入れ先として研究員としていくことになった。その間に阪神大地震が起…

メロンパンの匂い

2018年の4月から夏休みまで、私は専修大学へ週一回一コマだけ「比較文学」を教えに行っていた。記録的な暑さの夏で、後半えらい目にあったが、向ヶ丘遊園前駅で降りてバスに乗って反対側まで行っていた。駅前にメロンパン屋があったので、帰路にはここで焼き…

休み時間に孤立する

パーティではっと気が付くと孤立しているというのは吾妻ひでおも書いていたが、私も割とそういうことはあって、学会の懇親会などでよくあったのだが、それより怖かったのは、学会で発表と発表の間の時間の孤立で、はっと気が付くと、みな誰かと立ち話をして…

遊廓 (とんぼの本) 渡辺豪 アマゾンレビュー

謎の人星2つ -、2021/07/13ツイッター「遊廓部」の人だが、華麗な遊郭建築の名残を期待すると失望するだろう。著者は過去の遊廓礼讃者ではないのだが、近代国家を糾弾する人であり、売春防止法の施行で遊郭は終わったと言い、その後のソープランドについては…

吉永仁郎「滝沢家の内乱」

吉永仁郎(じろう)の戯曲「滝沢家の内乱」は、馬琴の老いてからの家庭内を描いたもので、1994年5月「悲劇喜劇」掲載。蝉の会が紀伊国屋ホールで94年6-7月に上演。馬琴は大滝秀治、お路は三田和代。 馬琴が「春色梅暦」の悪口を言うところがあり、一人の男を…

ボケる志ん生

古今亭志ん生も年をとって間違えることがあったというが、ベリー・ベスト・オブ志ん生の「お直し」を聴いていたら、吉原のはじめの話をして「平賀源内」が作ったと言っていた。庄司甚右衛門または甚内というのが普通だが、甚内と間違えたんだろう。そのあと…

リンカーンは何が悪かったのか

中学二年か三年の時、私はリンカーンは偉い人だと言っていた。当時の私は左翼だったのである。するとひねくれ者の友達が、下校途中で、「リンカーンは南北戦争の時××××××。お前はそれでもリンカーンを尊敬するのか」と言い出した。私は××××のところがよく聞…