親と子のすれ違い

 私が若いころ、両親それぞれに、私の趣味に媚びるような買い物をすることがあって、父親が村上春樹ブックとか三島由紀夫の世界とか買って来たのは、私が村上春樹三島由紀夫を嫌いなのを知らないでなので困ったことだったが、母親は、カナダ留学中に『批評空間』を買っておいてくれるよう頼んでおいたら、帰国した時、別冊の『ANYONE』という浅田彰の趣味の建築の本まで買ってあって、あちゃあこれは要らなかったんだよなあと思いほどなく売ってしまったが、浅田の伯父が建築家だったというのを昨日知ってそういうことだったのかと思ったがあの当時から建築についてあれこれ言う人がいて、井上章一さんは専門だからまあいいんだがミーハー的建築趣味の人というのがわりあい理解できずに今日に至っている。