桑原武夫『『宮本武蔵』と日本人』アマゾンレビュー

桑原武夫鶴見俊輔らが「思想の科学」で1949年ころから15年くらいかけてやった協同研究。国民文学とも言われるが大衆小説であったり戦時中に天皇崇拝を広めたりした吉川英治の研究。最初の読者アンケートで、武蔵自身はあまり人気がないのを掘り下げていない。白井喬二とか中里介山とか大佛次郎とか出てくるが、今読むと海音寺とか司馬とかの話がないのが物足りない。武蔵は勧善懲悪じゃなくて単に人殺しではないかという視点がない。ユゴーバルザックディケンズに比べてと最後の鼎談で言っているがデュマがない。新書だからか、掘り下げが全体に足りない。また純文学の代表として志賀直哉が出てくるんだがそれが何かおかしい。夏目漱石谷崎潤一郎ではいかんのか。あとドナルド・キーンが武蔵の悪口を言ったというのを読みたいがどこにあるんだろう。
小谷野敦