メロンパンの匂い

 2018年の4月から夏休みまで、私は専修大学へ週一回一コマだけ「比較文学」を教えに行っていた。記録的な暑さの夏で、後半えらい目にあったが、向ヶ丘遊園前駅で降りてバスに乗って反対側まで行っていた。駅前にメロンパン屋があったので、帰路にはここで焼き立てのメロンパンなどを買って、翌朝の朝食にしていた。

 常に焼き立てが買えるとは限らなかったが、ある日焼き立てが買えて、これを抱えて切符売り場まで行くと、女子学生が二人いた。ここは日本女子大も最寄り駅だからどこの学生かは知らない。片方が、私に気づかないまま、ぼうっとして「ねえなんかメロンパンのにおいしない?」と言っていて、もう一人は私とメロンパンに気づいて、笑いながら(すみませんねえこの子バカで)というような顔をしていた。