芥川賞選考委員たちの負った「傷」

 倉本さおりとの芥川賞対談(「週刊読書人」)で、今の芥川賞選考委員の間には、古市憲寿、千葉雅也、乗代雄介、鈴木涼美など、他の分野で活躍していたり、派手な感じの人に授賞したくないという雰囲気があると指摘したが、やはりこれは、又吉直樹に無理をして授与した心理的傷があるからであろう。又吉作品は一般的には受賞してもおかしくない水準だが、三島賞で落とされたものに芥川賞が授与されるのは初めてという点で、やはり無理をしていた。島田雅彦などは古市を落とす時に、わざわざ、なぜ又吉はいいか言い訳をするほどに「傷ついて」いた。島田が落とされていた時期も、地味な中年女性の受賞が続いていたが、今はそれに次ぐ、地味受賞期に当たるだろう。