純文学世界の謎

 猫猫塾で、これから新人賞に応募しようというような生徒が、どの賞がいいかとか、どこの賞は選考委員がどうとか言うが、そういうことは最終選考に残ってからの話で、最終選考に残るだけでも大変なことだ、ということをまず言わねばならない。

 私は下読みをやったことがないので、生徒の書いた良くできた作品から判断しても、最終選考まで行くのは運があるなあと思う。

 で、さらに謎なのが、芥川賞候補作品で、これ新人賞に応募したら絶対二次あたりで落とされる、というようなのがあることである。

 その先も謎で、こないだ栗原裕一郎も言っていたが、つまらないものを書くわりに文学賞に恵まれたりする作家と、わりあいいいのを書いているのに不遇なのとがいる。あるいは四方田犬彦が書いた初めての小説がほとんど黙殺されるとか、まあ出来がよかったとは言わないが、唐十郎の明らかな失敗作は芥川賞をとっているのに。

 だから猫猫塾生が、なんでこんなものが芥川賞候補で、私のが新人賞落ちなのか、などと訊かれたら困ってしまうのである。