本多勝一が、「アメリカ合衆国」ではなく「アメリカ合州国」という本を出したのは、1970年のことで、「ユナイテッド・ステーツ」だから合州国だとしたのである。
しかしそれから十年以上たって、高島俊男先生が、これをバカバカしい語呂合わせとして、もともと「合衆国」というのは幕末明治に「共和国」の意味で作られた言葉で、それを「合州国」などとしてもくだらないことで、それなら「アメリカ連邦」とでもしたほうがいい、と『お言葉ですが・・・』で書いたのである。
私は当時高島先生を尊敬していたし、本多勝一は嫌いだったから「お、おう・・・」という感じで「アメリカ連邦」などと書いたりしていたのだが、これなど南北戦争の時に南部が名のった名前と同じになって紛らわしい。
時間がたってみると、「合州国」と書きたい人は書けばいいんじゃないかと思うが、かといって自分もそれをする気にはならない。私はだいたい「米国」と書いている。
(小谷野敦)