白石一文の反噬 

 昨日の産経新聞で、こないだの直木賞をとった白石一文が、まだ小説を書く気になれずにいると書いている。いったい小説は社会を変えることはできない、そんなことでいいのかという。留保もなく書いている。
 私は白石の受賞作をくだらないと思うが、当人も、直木賞狙いで書いたと言っていたから、本当に書きたいものを書いたのではないのだろう。別に小説に限らず、言論は無力だが、それでもまだ、真実を社会に伝えるノンフィクションのほうがいい、という。
 なかなかいいことを言うなと思った。むしろ、直木賞を与えた側に対する嫌味を立て続けに発しているともいえる。それで「反噬=恩ある人を裏切ること」とした。
 私も近頃の、こしらえもの小説にはうんざりしつつあって、私小説こそ本当の純文学だと、久米正雄みたいに言ってみたくなる。